内容説明
上流階級のスポーツとされていたボート競技。労働者階級の若者たちの集まりだったワシントン大学ボート部が、なみいる東部の強豪を打ち破って全米チャンピオンに輝き、ベルリン・オリンピックへの出場権を獲得する。だが、 “ヒトラーのオリンピック”とも呼ばれる同大会では、ドイツ、イタリアと対戦する決勝で、アメリカは思わぬ苦境に立たされる――。手に汗握る感動のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猿吉君
63
一人のボートマンの活動を追ったドキュメンタリー、長かったけど楽しめました。①感動はしたものの小説のようなイベントの連続ではないです。②ジョーの幼い頃が切なすぎます、一度挫折しかかりました。③ボートがめちゃくちゃ激しい運動であることがよくわかります。④物語を盛り上げるためにナチスドイツの酷さが書いてありますが今一つボート活動とは連動していないような。点数80/100→前半のジョーの人生の長さと後半のベルリンでのオリンピックの様子の短さのペース配分にちょっと違和感がありますが小説じゃないからと納得しました。2024/01/04
kawa
35
(再読)1930年前後の大恐慌・自然災害多発のアメリカ(映画「怒りの葡萄」の時代)が背景。親から捨てられたジョー・ランツがシアトル・ワシントン大学ボート・エイトの漕手としてベルリン・オリンピックで金メダルを獲得、ヒットラーやゲッペルスの期待を挫くまでの波乱万丈。ボート競技は英国・アメリカ東部の貴族スポーツ。そこに西部の貧民労働者階級がチャレンジ。ニューディール政策、ナチスの蛮行など時代描写も含めて読み応えありの秀逸作品。老人力全開内容亡失8年ぶり再読だが優れた作品は何度でも楽しめる手に汗ノンフィクション。2022/10/31
ケニオミ
12
出会えて本当に良かった本です。ワシントン大学のボート・クルーがベルリン・オリンピックで金メダルを獲得するまでの過程が、メンバーのジョーを通して描かれます。親から見捨てられ、心に傷をもつジョーが、ボート競技を通して仲間を信頼するまでの軌跡が心を打ちました。「最も大切なのは、一人ひとりがボートの中で行う動きの全てを、他の漕手と調和させられるかだ。そのためには、自分の心を彼らに向けて開き、彼らを思いやらなくてはいけない。自分の全部を明け渡さなければいけない。たとえそれで、心が傷つくことがあっても」一押しです。2014/12/06
Koki Miyachi
11
1930年代に上級階級のものとされていたボート競技。労働者階級であったワシントン大学ボート部が、全米チャンピオンになりベルリンオリンピックに出場する青春を描く。ボート競技に必要とされる精神力、チームワークなどメンタル面、技術面の緻密な描写、主人公ジョー・ランツの苦難に満ちた人生とエイトクルーとの心の交流に心が熱くなる。ボート競技の世界を知ったことも大きな収穫。ヒトラーのオリンピックというご大層なタイトルよりも、THE BOYS IN THE BOATというオリジナルタイトルが端的に内容を伝えている。2015/06/08
sasha
7
スポーツ・ノンフィクションであり、ひとりの青年の成長の物語でもある。僅か15歳でひとりで生きて行くことを余儀なくされたジョー・ランツを中心に、ナチス政権下で開催されたベルリン・オリンピックの8人乗りボート競技にアメリカ代表として出場したワシントン大学ボート部の軌跡が、時代背景や政治状況と並行して語られる。ボート競技の知識が一切なくてもオリンピック決勝のレースの模様は、まさに手に汗握る感じで引き込まれた。近年まれに見る秀逸なスポーツ・ノンフィクションだ。2016/08/03