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内容説明
世界を騒がせた、理化学研究所STAP細胞事件。この背後には日本の歪んだ科学行政があった。外圧によってもたらされた、分子生物学・再生医療分野の盛況と、潤沢すぎる研究資金。大学の独立行政法人化により伝統と研究の自由を蹂躙され、政府・産業界の使用人と化した大学研究者たち。学術雑誌の正体と商業主義……など、研究者を論文捏造に走らせる原因の数々を、81歳の国際的生理学者が、科学史を交えつつ鋭く指摘する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
70
2015/2/3 ジュンク堂書店神戸住吉店にて購入。 2015/3/25〜4/2 昨年の理研の問題を機に書かれた本。内容的には首肯すること多し、だが、個人的な恨みが背景に透けすぎているような気もして、ちょっと閉口するところも。20年ほど前に始まった極端な予算の傾斜配分が日本の科学を停滞させている、ということには全く同意する。2015/04/02
hatayan
41
2014年、STAP細胞事件の起きた直後の刊行。 著名な科学誌に論文が掲載されることと学問的価値は次元が異なる話で、注目を集めるテーマが昇進や研究資金の獲得に有利に働くと基礎研究がやせ細ることは避けられない。民間の競争原理と学問の精神とは根本的に相容れず、悲鳴を上げる研究者は論文捏造にいとも簡単に誘惑されてしまう。野口英世が論文捏造の先駆者として再評価されているとは意外でした。 終始漂う湿っぽく尊大な筆の運びが鼻につきますが、研究の世界で功成り名遂げた人の特権ということで適当に読み飛ばすのが良いでしょう。2019/07/10
Willie the Wildcat
37
科学研究の道筋。政官財の思惑の違いが、もれなく理研騒動迷走の一端。人材育成と中長期研究の弊害ともなる科学界の構造。功を焦る環境が、ボタンの掛け違いを積み重ねた印象。小保方氏個人の人身御供的な結末で終わることなく、人・組織・予算などの既存研究環境の見直しも必須。一方、問題となった”捏造”。無から有へ捏ねる・・・。Altmetricsも含め、現代の社会性を踏まえた科学的手法と中身の評価基準の革新も期待。2015/02/24
mazda
31
理研の問題、ひいては現在の日本の研究体制の問題であるということが、よくわかりました。大学の独立行政法人化は予想通りガンのようで、これにより研究期間の短期化、特定テーマへの予算の集中化などが起きたようです。確かに小保方氏の捏造は悪質ですが、彼女の論文をろくに審査もせずに採用しておきながら、いざ捏造になると彼女1人の責任とした理研の、体質の問題が大きいと思いました。しかし、野依氏はノーベル賞をとっているのは周知ですが、高額所得を申告せずに重加算税を含む追徴課税を受けていた、という事実はいただけないですね…。2015/03/09
佐島楓
31
日本政府と大学の関係に問題があることなどはよくわかった。ただちょっと著者の私情が入りすぎている印象も受けた。お怒りはごもっともだと思われるけれど、こういう題材こそフェアに論じていただきたかった。2014/11/22