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内容説明
上流階級の令夫人コニーは、戦争で下半身不随となった夫の世話をしながら、生きる喜びのない日々を送っていた。そんなとき屋敷の森番メラーズに心奪われ、逢瀬を重ねることになるが……。身分や地位を超えて激しく愛し合う男女を描いた至高の恋愛小説。過激な性描写ばかりが注目されてきた従来の作品イメージを覆す新訳。登場人物たちの苦悩や絶望はきわめて現代的であり、今を生きる我々にとって隣人とも呼べる存在だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
97
発表当時、猥褻な作品として発禁となり、裁判沙汰にまでなったという問題作ですが、然程問題作とは思えませんでした。過激な内容というほどのものでもなく、比較的シンプルな恋愛小説です。不倫ではありますが、地位や立場を超えた愛の物語。恋に落ちるという心理に重みを置き、「性における人間関係の根源的回復」を軸にしていると言えるでしょう。性により開放された人間性を描いた奥深い作品だと思います。2016/05/18
藤月はな(灯れ松明の火)
68
性愛描写が露骨すぎるという理由で発禁となった作品。しかし、注目すべきは性愛ではなく、恋愛における男女の心の変化や愛は冷めているのに夫婦でいることの不幸や情けなさが細やかに描かれていることだったと思わずに入られません。特に男性のローレンスが「どうしてこんなことまで分かっているの!?」と思う位、恋愛や家族における女性の心の機微を理解している点は必見です。最も妻の愛が離れたと実感すると経営に没頭する一方で甘やかしてくれる家政婦に依存し、赤子帰りする夫の言動にはドン引きしました。しかも身近にあるからこそ、怖いわ…2015/02/09
Shintaro
64
百聞は一読に如かず。中学生のように興味本位で読み始めたが、さにあらず。本作のほとんどは人間とは何かという思索に充てられている、美しい物語だった。階級社会や性役割への批判もあり、読む人によってはプロレタリア文学やウーマンリブの走りと読む人もいるだろう。戦争による男根喪失の神話でもある。メラーズはバイの素質もありそうだ。本作を発禁にする試みは当局の文学的センスの欠如をさらすものだ。どこの国かと思っちゃうよね。一番気に入ったのはロレンスが文学オタクだったこと。タイトルだけで敬遠していた方には御一読をお薦めする。2018/12/16
seri
55
世に言う「チャタレイ裁判」は全く知らずに読みました。知らなくて良かった。性描写に主点がないのは明らかで、物語の主格の多面的な奥深さを見逃してしまう。写実的であり同時に芸術的。人間性を失っていく社会と、性による人間性の解放、成長の対比。知性に凝り固まって人間から離れていく者と、原始的な喜びでもって高潔な精神に目覚めていく者。優れた社会批評は時代を越える。社会描写はこの現代にも通じるように鋭い。奥深く豊潤な読書でした。空しさは人をも殺す。ならば、人間性を殺している本当の犯人は社会に蔓延る虚無なのかもしれない。2016/03/11
fseigojp
28
こういう階級社会をまたぐ恋は、今後の日本でもリアルな風景になってくるのではないだろうか2016/10/19