内容説明
松本清張の軍隊経験が垣間見られる数少ない作品! 過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた山尾に、召集令状が届く。この一枚の紙が、山尾のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った山尾は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
81
著者の実体験が盛り込まれた重い展開は好き嫌いが分かれそう。ただその時代で描かれた表現ってのは学んでみる価値はある。主人公は面白い手段で計画を立てるのだけど、図に乗ってしまったかなぁという印象。よっぽど根に持っていたに違いない。いやよく辛抱したと思うんだけどね。作中に描かれている、なんとなく軽く済むだろう、戦地に行かなくても済むだろう…といった淡い期待をスッとかき消してしまうような、あたかも二度と替わることのない硬いレールに載せられているかのような絶望感は、背筋が凍りますなぁ。2021/12/29
シュラフ
27
この作品では松本清張自身の軍隊経験・・・軍隊での古兵による気分次第の私刑、敗戦後の軍人による軍事物資の隠匿、など日本人の醜いさまが生々しく描かれている。赤紙1枚で軍隊にひっぱられ、辛い軍隊生活の中で常に頭にあるのは家族の安否・・・。戦争経験者たちの多くは辛い当時のことをあまり話たがらない、「戦争はもういやだ・・・」とつぶやくだけである。当時いったい何がおこっていたのか、日本人たちはどう生きていたのか、経験者でなければ語ることはできない。『永遠の0』に感動してしまうのは危険、やはり平和な世の中がいいのだ。2015/05/10
たぬ
25
☆4.5 ぐぅぅ。ムカつく。なんて腹の立つ奴なんだ安川。バレバレの詐病でサボるだけでなく超絶上から目線で罵詈雑言に理不尽な暴行に。でもこういうのに限って世渡り上手なんだよねえ。闇市の大物になってた安川に比べて自分以外の家族全員死んでしまった山尾が哀れでならないよ。実家が神田で疎開先が広島って時点ででかいフラグ立ってたけども…。数年後見事復讐を遂げるもやはり警察の眼は鋭かったね。2023/10/02
gtn
23
主人公に感情移入する。日本人とは不思議な民族である。主人公と同じ目に遭った人間が戦中、戦後山ほどいたはずなのに、同種の事件をあまり聞かないのはなぜか。心が広いのか、忘却するのか、諦観するのか。2022/08/06
ちゃま坊
22
赤紙で招集され軍隊生活でのいじめ。そして残された家族の悲劇。戦争には反対だが誰も口に出して言えない時代。 今ロシアが侵略戦争をやっているが同じようなことが起きていないかと想像する。 終戦後に起こった殺人事件の動機はイジメと徴兵問題にある。 松本清張の読みやすさは忘れた頃に状況説明を繰り返してくれるところにある。★★2023/05/13
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