ハヤカワ・ミステリ<br> たとえ傾いた世界でも

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ハヤカワ・ミステリ
たとえ傾いた世界でも

  • ISBN:9784150018863

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内容説明

雨の止まぬミシシッピ州のある町。密造酒製造人の女と潜入密造酒取締官の男。偶然拾った赤子が敵対する彼らを奇妙な形で結びつけ……弱き者たちが汚れた世界で純粋に生きる、感動のミステリ。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちょろんこ*勉強のため休止中

156
禁酒法時代。酒を密造する人妻ディキシーと潜入捜査官インガソル。インソガルが偶然見つけた赤ん坊によって二人は出会う。ディキシーの夫が犯罪者である事と、今にも洪水で決壊しそうな町が舞台なのとで始終切迫感があった。大まかには比較的シンプルで、かつロマンティックですらあるボーイミーツガールの物語。犯罪者が主役なのでモノトーンの映画のような雰囲気だが、唯一赤ん坊が対照的に光を帯びていた。そう、この赤ん坊の出現でディキシーの世界は大きく変わった。そして町崩壊のクライマックスシーンは圧倒的な迫力だった。一気読みした。2014/09/14

ずっきん

82
禁酒法時代、ウイスキー密造人と密造酒取締官が未曾有の大洪水に襲われたミシシッピで出会う。あの『密猟者』の作者だもの。間違いはないと思っていたけれど、夫婦共著の成せる技なのか、ディキシー・クレイと赤ちゃんの繊細な描写と、インガソルやハムの語りの邂逅は、身悶えするほどの情緒と情景を胸に叩き込む。ああ、人間って。男と女って。当時の空気を醸し出すような伏見氏の翻訳がまた素晴らしい。「11月に去りし者」と並べて書棚に置きたい。それを眺めるたびに胸を焦がしたい、というレビューを読んで、ほほうと手に取った。むろん黒焦げ2021/08/04

ひめ

37
ディキシーでもなく、クレイでもない。ディキシー・クレイと毎回フルネームで書くことの意味があるんだろうなぁと思いつつ。禁酒法時代、川の氾濫、この時代に物語を進めているため、雨ばかりのとても暗いイメージ。その中で、ウィリーへの愛が輝いている。これは愛の物語かな。ハムとインガソルにも師弟愛や友情があったと思うし。いつドカーンとくるのか、どきどきしたけど、よかったよかった。2015/10/19

伊之助

35
1927年アメリカ、前年からの豪雨によってミシシッピ川沿岸各地の堤防が決壊し、未曾有の大災害が実際にあったという。時は奇しくも禁酒法時代。これらの時代背景をベースに、それぞれの事情を抱えた孤独な男と女、それに幼な子の人生が、堤防決壊の不安と雨と泥濘に覆われた南部の小さな町で交差する。この小説はこれら三人の登場人物を中心とした人間ドラマだ。最終場面の堤防決壊と逃げ惑う人間や動物達の描写も圧倒的で読み応えがある。幼な子を見る寡黙な女の眼差しには愛が満ちている。この描写は一方の作者アンフェンリイの目線だろうか。2015/10/19

アルラ

23
1927年のアメリカ南部ミシシッピ川大洪水をバックに、密造酒をめぐる攻防は待ったなしで進む。そんな最中、哀しい過去を背負う男と女は出会ってしまう。偶然に偶然が重なり、無縁の赤ん坊が二人を強く結びつける。次第に八方ふさがりの場面展開にハラハラドキドキしながら夢中で読んだ。長雨にうんざりする描写は今年の私達には共感ありすぎるし、家が水に飲み込まれていく様は生々しかった。ミステリというよりヒューマンドラマに近いかも。愛の物語であり、生命の力強さをひしひしと感じるストーリーだ。インガソルのブルーズを聴いてみたい。2014/09/22

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