内容説明
「歌なら本音がいえるから」。乳がんの再発した妻・河野裕子の発案ではじめた夫・永田和宏と子どもたちとのリレーエッセー。我が家の糠床のこと。息子の子どもたちのこと、長く飼った老猫の失踪、娘の結婚。そして最後の言葉……。愛おしい毎日、思い出を短歌とともに綴りながら、家族はいつか必ず来るその日を見つめ続けた。 母の死をはさんで二年にわたって続けられた、歌人家族によるリレーエッセー。孫たち、娘の結婚、思い出……。そのすべてが胸をうつ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
21
稀代の短歌家族。本書のエッセイはさながら詞書のように掲出歌のそばに佇んでいる。気を衒ったようなよくわからない(それは私の理解力不足かもしれないが)短歌よりも、こういうまっすぐ胸に迫ってくる歌が好きだ。作者がほのかに見える歌がいいな。2019/08/28
てん
17
歌人の永田和宏・河野裕子夫妻と2人の子供、息子の妻の5人が、河野裕子の最後の日々に新聞でエッセイを連載。なんだかもうこの家族のファンになってしまった。短歌が家族のコミュニケーションツールになっていて、しかもその内容は濃い。家族の私生活を公にしているようで恥ずかしさもあるかもしれないが、短歌だからこそ、表現できることもあるのだろう。読んでいて時が止まったような不思議な感覚を覚えた。しばらく、この家族の詠んだ歌を追ってみたい。2019/09/26
てくてく
9
がん再発、余命宣告を受けたのちに引き受けた家族観のエッセイ+歌からなる一冊。家族全員が表現者であることに息詰まることもあったのではないかと思われるが、それぞれが家族の中心である河野裕子氏の死を意識しつつ、彼女への思いやりを示しつつ文章がつづられている。河野裕子氏の自他への家族の思いを率直に表してしまうところは今でも苦手だが、周囲の人から思われる魅力を持つ人だったのだろうとは思う。2017/08/29
ほう
4
河野裕子さんを中心にして夫、息子、娘そしてお嫁さんの歌とエッセイが納められた本。家族としての思いやりや信頼が伝わって来て心に響く良い本だった。「裕ちゃんごはんよ…」「糠床」の歌は愛情溢れる環境の中で育まれ、そしてその愛情を家族に注いでいった河野裕子さんの姿がストレートに伝わって来た。紅さんのあとがきも凛とした中の柔らかさを感じて読み応えがある。2017/10/18
みみなし里緒
4
感想の書きづらい本だ。あんまり厚くないけど、泣いてしまうので、時間はかかった。先に読んだ「歌に私はなくだらう」もそうだけど、ここまで書くのかという思いがある。恐らくそういう趣旨の非難もあったに違いない。子たちも含めて家族4人が詠み、大きな賞を得るという事も嫉妬の的になったことだろう。それでも永田さんは書き残してやりたかったのだろう。妻を思ったより早くに死なせてしまったという呵責が余計そうさせるのかもしれない。歌人として、リスペクトしている気もちが伝わってくる。やはり私は河野さんの歌が一番好きだな。2015/07/03