内容説明
清州会議で秀吉の天下取りに協力した丹羽家。だが123万国の大大名になった時、潰される運命は決まってしまった。理不尽なまでの仕打ちで滅亡させられた御家を復活させたのは、空論屋と呆れられた家老とどんな時も理想を失わなかった城郭好きな殿様だった!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
132
織田信長の宿老として活躍した丹羽長秀。豊臣秀吉の天下獲りに力を貸し北陸で123万石の巨封を得る。しかし、子の丹羽長重の代で身代を削られ、何とか奥州二本松で家を保った。この作品は知られざる丹羽家の興隆を知ることが出来る。鍵は主人公である軍師・江口正吉。突飛な発想で空論屋と呼ばれる江口の活躍。知られざる丹羽長重の人物。北陸の関ヶ原合戦の手に汗握る攻防。御宿勘兵衛が登場するのも嬉しい。私も知らなかった江口正吉。マイナーな人物を主役に据えたが、実に楽しめる。有名ではなくとも輝く武将達の活躍に感嘆した。力作である。2019/06/17
ポチ
29
丹羽長秀が割と地味(失礼^^;)な存在だったので、二代目の長重や、家臣の江口正吉の事は知らなかったです。秀吉による目も当てられぬ減封や、関ヶ原の敗戦による滅亡、その後の奇跡とも思える復活。どんなに苦しい時でも変わらぬ長重と正吉の爽やかな主従関係が印象深かったです。次作も読んでみたい作家となりました。2016/03/14
onasu
28
織田信長の重臣丹羽長秀の配下、江口三郎右衛門正吉は戦にあたって、合理性はあるも奇策をひねり出すことから、空論屋三右(ウツロヤサンエ)とも称されていた。 丹羽家は山崎合戦の後、越前、加賀が加増されたが、それは豊臣政権下で看過できない存在となり、長秀が行く末を杞憂した通り、その死後には数万石に減らされ、関ヶ原の役で改易に。 三右も一度は離れるも、跡継ぎの長重が小大名に返り咲くと早々にその元に復帰し、長重の築城術と三右の空論屋をもって、丹羽家を再興していく。九州の立花家ばりの復活劇、おもしろく読めました。2017/08/27
MJ
25
簑輪諒のデビュー作。2013年歴史群像大賞佳作。織田信長亡き後の丹羽家の物語。後に丹羽家の筆頭家老となった江口正末が、本当にうつろ屋軍師と呼ばれていたかどうかは不明だし、もしかしたら軍師よりも武者タイプだったかも知れないが、これまであまり知られていなかった武将にスポットライトを当て、歴史小説として仕上げた正に佳作。2021/01/13
maito/まいと
23
戦国時代ファンの心をくすぐる傑作現る!盤上をひっくり返せるほどの構想力を持ちながら、どこか抜けている男・江口正吉。彼がその能力と想いを持って、主君・丹羽長秀と長重と共に奔走する姿を描いた歴史小説。怪しい存在であった丹羽長重を取り上げたことも素晴らしいが、無名の江口を主人公に添えて、他の大名と相対していくその壮大な化かし合いが胸躍るおもしろさ。これでデビュー作、箕輪さん今後が楽しみすぎる。ただ、江口の“うつろ屋”が中盤以降普通の軍師になったことが残念。もうすこし“うつろ屋”らしい変化してほしかったなあ。2014/10/21