内容説明
1776年の新大陸で、独立戦争の起爆剤となった大ベストセラー『コモン・センス』。アメリカについても戦後日本についても、本書を知らずに語ることはできない。それどころか、本書には面白い特徴が見られる。イギリスに対するアメリカの従属ぶりを批判し「自由のために決起せよ」と叫んだトマス・ペインの議論は、「イギリス」を「アメリカ」に置き換え、「アメリカ」を「日本」に置き換えるだけで、「真の独立のために決起せよ」と叫ぶ日本の反米保守の議論とそっくりなのだ。『コモン・センス』は新大陸の人々に対して「独立アメリカはかくあるべし」というイメージを説いた書だが、そのイメージには「原理主義的な宗教性」「合理主義・啓蒙主義的な虚構性」という二つの大きな柱がある。この二つが結びついた結果、理想と矛盾を孕む国となった……。これまで日本では不完全版でしか読めなかった歴史的名著が、華麗な訳文のもと全面復活!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
27
読後の感想は、序盤の解説ともいえる1章を後に読むことをお勧めする。それだけ本編よりも面白く、読者に疑問を投げかけつつ予想される解答を匂わす、そしてご名答!とやる手練手管が、小憎らしさもあるが悪い気がしない。そして、肝心のコモンセンスの本文のほうはヤクザな意訳十分なので(アメリカ移民など文盲や貧困や重労働などの学習機会の欠落の多い人々に対してならば頷ける)大国の独立の契機となった、ある意味聖書と比する代物が、とても上級に思えないアジビラ程度に感じる。しかしまあ、このアジテーションで世界史が一変したのは事実。2021/01/21
壱萬参仟縁
25
アメリカ独立は、新しい主権国家が生まれるだけにとどまらず、全人類に普遍的自由=救済をもたらす世界国家の誕生 というニュアンスを持つにいたった(35頁)。世界国家という虚構にたいし、積極的に肩入れすることが、みずからの アイデンティティとなっている国がアメリカ(39頁)。万人の権利を尊重する社会を(195頁~)。現代も普遍的な価値だ。 独立にいたる道は、すっきりした一本の直線である。和解にいたる道は、入り組んだ複雑きわまる折れ線(224頁)。 2015/03/26
山のトンネル
4
その時代の社会通念に反する新しいアイデアは、常に疑いや侮蔑をもって迎えられ、時には恐れられることすらある。2022/05/04
バルジ
2
訳文が崩れすぎて逆に読み辛さすら感ずるも内容は極めて面白い。アメリカ独立を「紙の御心」と見做し「常識」と銘打ったこの檄文はアメリカの歴史を生みひいては世界史の流れすら変える。本書を読むとアメリカ建国の「物語」の一片を窺える。アメリカは「神に祝福」された丘の上の町である、この「神」を背景にしたオポチュニズムはアメリカという国家の奥底に響く低音と言って良い。独立前から響き渡るこの低音は200年以上たった今でも変わらない。歴史は全く同じには繰り返さないが韻を踏む。この韻は今後のアメリカのでも繰り広げられるだろう2024/11/24
nika
0
独立前のアメリカがイギリスに隷属している様がまるで今の日本のようだというコメントを何かでみて、買ってみた一冊。独立に燃える純粋な気持ちが今の日本にあるとは思えないけど。今のアメリカは王こそいないけど昔のイギリス的立場にあると感じた。2014/09/13