岩波新書<br> 過労自殺

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岩波新書
過労自殺

  • 著者名:川人博
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2014/09発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004314943

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内容説明

2014年,過労死等防止法成立.近年,二,三〇代の青年や女性たちの間にも,仕事による過労・ストレスが原因と思われる自殺が拡大している.なぜ悲しい犠牲が減らないのか.初版の内容を基調にしつつ,最近の事例や労災補償の有り様の変化,歴史の検証などを新たに盛り込み,法制定後に求められる防止策と善後策を具体的に示す.

目次

目  次
   はじめに

 第一章 事例から
  1 「願うことはただ一つ。5時間以上寝たい」──二四歳・化学プラント工事監督者「このまま生きていくのは死ぬより辛い」──二七歳・システムエンジニア
   ミクシィの手記(ブログ)から/真夏に三八日間連続勤務/自責感・希死念慮/月二〇〇時間の時間外労働まで許容した三六協定/システムエンジニアの過労死/三三時間連続勤務も/スレイブ・エンジニア?
  2 「残業月平均15時間」の求人票──二三歳・新入営業職社員
   入社一年目の冬に/ 「残業月平均15時間」の求人票/ 「予算」達成のための重圧/一〇月以降の過重労働による疲弊/ 「即戦力」という名の過重労働の押しつけ
  3 朝早くから夜遅くまで行動を管理され──二六歳・金融機関女性総合職
   証拠保全/深夜勤務早朝出勤の繰り返し/サービス残業の実態が明らかに/体調の悪化/退職の申出と支店長のパワハラ/電通「鬼十則」の配付/若い女性労働者にひろがるうつ病と死
  4 災害対応による過労の末に──四〇歳・旅行会社課長
   遺族の言葉/JTBにとって学校はVIP/部下の退職と課長への昇進/ニュージーランド大地震の発生/精神疾患・失踪・死亡/不祥事の背景にあるもの/災害後対応による過労死
  5 「給料泥棒!」と罵倒されて──三四歳・医療情報担当者
   遺書/人間のいのちと健康を守るはずの製薬企業で/顧客先病院の医師に土下座/同僚たちから遺族への謝罪の言葉/本件パワハラの背景/パワハラ容認の労基署の誤りを正した裁判所
  6 脅迫された被害者なのに左遷されて──五一歳・中間管理職
   読者からの一通の手紙/手帳の日記/中傷ビラ/会社の理不尽な対応/妻も病死し、子二人が労災申請/東京地裁が労災と認定し、確定
  7 医療現場の過酷な労働──二九歳・外科医師/四四歳・小児科医師
    「休息したい」/二年半で休日がわずか二七日/恒常的な睡眠不足、体調の悪化/小児科医師の遺書/常勤医師が半減して/労基署が労災と認めず、東京地裁が認定/医療の質にとっても深刻な事態
  8 破れた新任女性教員の夢──二三歳・小学校教員
   新任後わずか二か月後の悲しい死/単学級の学校でクラス担任/負担の重い新任教員の四~五月/残業・休日出勤・自宅労働をしても追いつかず/保護者からの批判に悩み苦しむ/疲れ果てて……/公務災害申請/他の職場でも同様の犠牲者が
 第二章 特徴・原因・背景・歴史
  1 民間・政府の統計
    「過労死一一〇番」/政府の統計
  2 過労自殺の特徴
   年間二〇〇〇人以上の被災者/過重労働の特徴と背景/うつ病などに罹患/普通の労働者がうつ病を発症する時代/加害者が被害者を叱る/闇に葬られる過労自殺
  3 政府の自殺統計の分析
   警察庁統計と厚生労働省統計/自殺者数・自殺率の推移/性別・年齢・職業の有無/原因・動機分類の見方/ 「勤務問題」が原因・動機/ 「勤務問題」の具体的内容/自殺場所/労災申請数は、氷山の一角/労災認定例から見る年齢/労災認定例から見る業種等
  4 遺書の特徴
   なぜ抗議でなく、おわびなのか
  5 過労自殺の社会的背景
   デュルケームの自殺論/失業率と自殺率の連動
  6 人権史・労働史から見た過労自殺
   諏訪湖畔の無縁墓地に眠る人々/一日一四~一五時間労働と入水自殺/ある女工の遺書/肺結核、消化器疾患、精神疾患……/戦前の剥き出しの強暴な資本主義への後戻り
 第三章 労災補償をめぐって
  1 労災補償とは
  2 労災補償に関するQ&A
  (1)労災申請の手続
   制度の仕組み/会社の協力義務と申請行為/あきらめないで申請を
  (2)認定件数と認定基準
   労災認定件数/労災認定基準
  (3)長時間労働の立証方法
   労働時間を証明する資料/留意すべき事項
  (4)労働時間以外の要素について
   心理的負荷評価表/ハラスメント
  (5)精神障害発病の証明
  (6)不服申立と行政訴訟
   審査請求・再審査請求/行政訴訟
  (7)公務災害申請
   手続の概要/公務災害の認定基準
  (8)企業による補償
   二種類の企業補償/安全配慮義務違反/損害の内容/受領済の労災保険金の一部控除
  (9)会社に対する職場改善要求
   労基署に申告・告発/会社との交渉
  3 労災行政を変えてきた遺族の活動
    『ビルマの竪琴』/労災申請後一〇年を経てついに労災認定
  4 労災行政の今後の課題
   二〇一一年認定基準/脳・心臓疾患との相違/ハラスメント/複数の負荷がある場合/負荷評価の対象期間/発病後の負荷による悪化/同種労働者論と心理的負荷の程度
 第四章 過労自殺をなくすために
  1 職場に時間のゆとりを
   時短論議はいずこへ/約五〇〇万人が年間三〇〇〇時間以上働く/深夜労働の増大/三六協定の限界/裁量労働制導入の危険性/男女共通の労働時間規制を/インターバル規制の導入を/公務員の職場の改善を
  2 職場に心のゆとりを
    「がんばり」の限界/ 「殺されても放すな」/失敗が許容される職場を/義理を欠くことの大切さ/失業をしてもやっていけるセイフティネットを/過重労働のグローバル化に歯止めを
  3 適切な医学的援助・治療を
   なぜ精神科治療を受けなかったか/職場における自殺予防マニュアル
  4 学校教育への期待
   企業の実態を知らせることの大切さ/ 「ブラック企業」という言葉の落とし穴/ワークルールを学ぶことの大切さ/ “一生懸命”はやめよう
  5 過労死防止法の制定
   過労死はあってはならない/国連から日本政府への勧告/新しい経営理念と実践/企業倫理と健康経営/過労死等防止対策推進法の成立/法律の意義と今後の課題
   あとがき
   [巻末資料]業務による心理的負荷評価表(抄)
   主要引用・参考文献一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

GAKU

59
第1章の事例は悲惨である。何故過労自殺にいたるまで働くのか?転職すれば良いではないか。基準監督暑に申し出れば良いではないか。等々思う人も多いのではないか。当初からそのような事が出来る人は、とっくにそうしているでしょう。真面目で責任感が強い人ほど追い込まれやすい。鬱になりやすい。有給取得などもってのほか。残業代も休日出勤代も払わず長時間労働を強いる。安い人件費でこき使うだけこき使う。そんな企業体質でなければ利益をだせない無能な経営者、会社をもっと糾弾するべきだと思う。電通だけでは生ぬるい!2017/02/25

kinkin

37
仕事上の過労と思われる自殺が毎日約7人、日本の自殺者が毎年3万人くらいということは、年間自殺者の1割弱ということになる。本書に書かれている内容は今の時代ごく普通の社会常識となっている。昔が良かったといえばそれは時代遅れといわれるかもしれない。しかし、本文中にある「失敗が許容される職場の必要性」失業してもなんとかやっていけるセイフティネット制度の構築は重要だ。報酬は「時間」から「結果」オンリーの賃金体系このままでは優秀な知識やスキルを持つ若者がますます働きづらい世の中かつ過労自殺が増加する社会が続くと思う。2014/10/01

壱萬参仟縁

35
2014年、過労死等防止対策推進法成立(表紙見返し)。最初から、激務の業界、労働現場の事例があり過ぎて、読者も気がめいってしまう。しかし、これが現実なのだから、直視して、労働者の人生、いのちに健康ドロボーを辞めさせる声を上げることが何としても必要である。多くは20代の過労死が顕著のようだ。若いからといっても、限界はある。それを招致で企業経営が行われているのがCSRなど果たせないのである。上司によるパワハラは、多くの労働者を傷つけ、死にまで追いやっていく(50頁)。2016/02/03

キムチ

33
内容は非常に重い。執筆者は過労死案件を専門に担当している弁護士。新書という事もあるけれど、薄いのによくまとまっているし、内容が整理されていて解り易い。今急務問題である「ブラック企業」問題にも言及している。解って欲しい事はそれが決して一部の悪質企業ではなく、すべての企業の在り方を問うテーマである事。そしてテレビを初めとするマスコミに暗然たる力を持つ存在があり、世間向けには甘い口当たりのいい言葉を垂れ流していても裏では何があるかを知らない人が多すぎるし、それは決してCM等からは流されていないという事。2014/11/23

いっちゃん

20
命は一個しかないんだよね。4月から高二の娘が学校の課題図書で借りた本。社会に出る前に必ず目を通しておくべき。過労死を失くすには『義理を欠くこと』。肝に銘じて働くべき。一番大事なのは本人の命と健康。様々な事例を紹介していますが、長野県の飯田さんの事例が凄かった。旦那様を失くした奥様の戦い。小さなお子さんを抱えて、本当に大変だったにちがいない。絶対に負けないという気持ちにすごい勇気をもらえる。草葉の陰から旦那様、こんないい女と添い遂げられずに残念がってるはず。2024/03/28

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