内容説明
眉目秀麗、文武両道にして完璧な優しさを持つ青年、漱太郎。しかしある嵐の日、同級生の夢生はその悪魔のような本性を垣間見る――。天性のエゴイストの善悪も弁えぬ振る舞いに魅入られた夢生は、漱太郎の罪を知るただ一人の存在として、彼を愛し守り抜くと誓う。切なくも残酷な究極のピカレスク恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワニニ
53
ユメが漱太郎に宣言されたキスシーンで、私もこの小説の、山田詠美の奴隷となった。それはあまりに甘美だけれど、残酷な。背徳的と言うが、これはエログロを通り越し、究極の愛の完成に昇華させている。素直に?読めば、ユメの純粋な愛の物語なのだと思う。そもそも性的欲求と犯罪行為は紙一重であり 愛と無関心は反意だ。漱太郎は、ああ見えてかなり自虐的。どのように妹への思いを育てていったのか、そしてこんな人間になったのか、もう少し突っ込んで欲しかった気はする。花鋏が持ち出されたラストは、鳥肌が立つ。久々の、狂おしい恋愛小説。2014/08/26
honoka
48
読了後、静かな涙溢れる。主人公の夢生が漱太郎に寄せる愛は最後に哀しい本懐を遂げたのだろうか。このラストは彼の夢なのではないだろうか。「何が、友情より男だ。友情より、おれ、だろ」「ユメの中で男と、おれ、の間には天地の差があるってのに」時折、言葉や態度で夢生を呪縛する漱太郎が沢山の女性を傷付けても、無償の愛情を寄せる夢生。しかし漱太郎もまた心底惚れていても手に入らないものがあったのだ。「だって 漱太郎だよ?」の夢生の言葉が切ない。2015/10/03
らむり
48
最初は面白かったんだけどな。だんだん気持ち悪くなってきた。2014/08/22
絹恵
42
"ぼくは、断ち切るという行為で、きみと固く固く結び付く。このいとおしい逆説。"美しいものを愛でながら浅ましさに抗わない姿勢に、何者とも交わることが出来ないきみを見つけたから、この選択は彼の救済でもあるのだと感じました。愛する人の罪を罰することが出来る、きみはぼくにこれ以上の罰を与えられるだろうか。これ以上の幸福があるだろうか。2014/10/13
アメフトファン
40
どんな人間でも自分の中に狂気が潜んでいるんだなという事を認識させてくれた本でした。それにしても人間って怖いですね...2015/05/05