内容説明
日本文学の最高傑作『源氏物語』。現代の読者が、少しでも平安社会の意識と記憶を知り、その空気に身を浸しながら読めば、物語をもっとリアルに感じることができるのではないか。本書は、平安人の世界を様々な角度からとらえ、読者を誘うことを目指した一冊。全65編のほか、五十四帖のあらすじ、主要人物相関図、平安の暮らし絵図なども収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
114
千年の時を経て読み継がれてきた『源氏物語』。今もなお変わらぬ人の心や男女の情愛を描き色あせない。しかし、現代人の目では見えにくい機微がある。平安時代の社会制度や風習、さらには神道や仏教・世俗信仰など、平安人に寄り添うための知識が必要。本書は、平安文学研究者の山本淳子氏による『源氏物語』への手引き書。54帖の各巻のあらすじと、その巻におけるトピックを一つ取りあげ、詳細で明快な解説がなされている。そのどれもが興味深くて、まるで大学の講義を聴講している生徒のような心持ちで読んだ。いざ、『源氏物語』へ!2019/07/26
ちゃちゃ
112
【角田訳『源氏物語』併読本②】再読。著者の山本氏は、今や源氏物語研究の第一人者と言っても過言ではないだろう。京都の大学で教鞭を執っておられ、私は過去に何度か氏の講演を聴いたことがある。ひとことで言うと、語り口も含めて明快でとても面白いのだ。本書は、千年の時を超えて物語を読むとき、現代とは大きく異なる宮廷社会の常識や社会制度、貴族の意識等を明確に解説し、物語に奥行きと深みを与えてくれる。また、各帖のあらすじも的確で自分の読み落としていた点を補ってくれる。源氏物語の併読本として、強くお勧めしたい作品だ。2022/06/24
さつき
75
源氏物語五四帖を一帖に一つずつのテーマで取り上げ、それに関する平安時代の様々なエピソードを紹介してくれる良書。貴族達の暮らしが実際どのようだったか想像の翼が広がりました。特に印象的だったのは「巻名は誰がつけた?」「内裏女房の出世物語」「死者の魂を呼び戻す呪術〜平安の葬儀」など。読みながら同じ著者の『源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり』を何度も思い出しました。無性に開きたくなり結局続けて読みました。2021/11/14
お昼寝猫
68
源氏物語54帖のあらすじと各帖にまつわる歴史エッセイで構成されている 気軽に面白く読めるばかりではなく、作者にきちんとした歴史文学知識の裏打ちがあるので、源氏物語と平安朝の実在人物との関わりも易しく解き明かしてくれる 源氏物語と共に物語の生まれた平安時代初期を知るのに適した本だと思う 来年の大河ドラマは紫式部 登場人物がかなり多そうなので人物像と時代背景を知る予習本としてもいかがでしょうか♪2023/11/28
しゅてふぁん
64
源氏物語五十四帖それぞれのあらすじと、その帖にちなんだテーマについて平安人の目線で解説されていてとても面白かった。源氏物語が書かれた一条帝の時代背景を知って読むとかなり深読みできるということがわかった。その最たるものは一条帝と中宮定子が世間に与えた影響だったと思えば、何度も挫折している源氏物語を最後まで読み通せるような気がしてきた…ような気がする。著者の『源氏物語の時代』を読み返したくなった。2021/08/30