内容説明
出島に薬草園を造りたい。依頼を受けた長崎の植木商「京屋」の職人たちは、異国の雰囲気に怖じ気づき、十五歳の熊吉を行かせた。依頼主は阿蘭陀から来た医師しぼると先生。医術を日本に伝えるため自前で薬草を用意する先生に魅せられた熊吉は、失敗を繰り返しながらも園丁として成長していく。「草花を母国へ運びたい」先生の意志に熊吉は知恵をしぼるが、思わぬ事件に巻き込まれていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
150
先日のこの著者の「落陽」を読んで楽しめたので、やはり実在の人物シーボルト(ここではしぼると先生といわれていますが)が出てくるある若い園丁(お庭番と言っていますが)の話です。どこまでが本当のはなしかはわかりませんが、シーボルトが自前で育てている薬草園に対してこの若い主人公が失敗などして叱られながらも工夫をして助けていくということである意味成長小説のような感じです。2020/10/30
のり
148
長崎・出島。阿蘭陀人医師「しぼると」の依頼で園丁となった15歳の「熊吉」。薬草園はじめ草木や花に至るまで育苗や植樹を管理する多忙さ。日本の風景・植物に魅せられた「しぼると」は母国に運びたいと夢みるが…失敗を重ねながらも知恵を絞り、期待に応えようと奮闘する熊吉の熱意。そんな中、後にシーボルト事件と呼ばれる渦中にのみ込まれていく。ただ阿蘭陀の国益とやぱん(日本)に対して愁いをかけた姿が全てを物語っていると思う。読む日の気分で幾通りの想いが滲む作品だと思う。良作。2018/12/07
エドワード
133
江戸時代の日本は園芸国家と言えるほど人々が植物を愛でた国だったと本で読んだことがある。長崎出島のオランダ商館付医師として来日したシーボルトの目に映った鮮やかな植物たち。彼が出島に薬草園を作るため、その仕事を手伝うことになる15歳の熊吉。不本意で臨んだ仕事だが、シーボルトの妻お滝や召使おるそん等との交流の中で、緑の乏しいヨーロッパへ日本の植物を持ち帰ろうと決意するシーボルトに共感し、懸命に植物の船荷の工夫を重ねる熊吉。背景に世界情勢に目覚める蘭学者と禁制の日本地図を配した緊張感と人の愛憎の細やかさが魅力だ。2017/06/23
優希
120
面白かったです。熊吉の真っ直ぐさと職人として成長して行く様子が清々しく感じました。先生とはシーボルトのことだったんですね。シーボルトと交流しながら様々な日本の花を海外に広めた熊吉。出島という閉鎖的な世界で己を生き抜く姿が格好良かったです。人に使われるのではなく、仕える生き方と言えるでしょう。自然の描き方や虫の声が素敵でした。秋の夜長に読むのが似合う一冊だと思いました。2015/10/14
ふじさん
104
シーボルトと彼の薬草園の園丁(御庭番)となった熊吉との心の交流を描いた作品。シーボルトの妻や娘等が絡んだ園丁の熊吉の成長記であると同時に、シーボルトの光と影を描いた歴史小説でもある。初めて知る事実も多く、シーボルトの日本人妻の苦悩や葛藤も丁寧に書かれており、興味深く読むことが出来た。シーボルトについては、ほとんど知識がないので、吉村昭や葉室麟のシーボルトに関する本も読んでみたい。 2021/04/29
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