内容説明
見る人の気分や世界観によって映り方が変わる風景は、“虚構”を生み、時に“暴力”の源泉となって現実に襲いかかる――。沖縄の米軍基地、連合赤軍と軽井沢、村上春樹の物語、オウムと富士山……戦後日本を震撼させた事件の現場を訪ね、風景に隠された凶悪な“力”の正体に迫る。ジャーナリズムの新しい可能性を模索する力作評論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともゑ
3
あさま山荘や酒鬼薔薇事件のニュータウン等の戦後の重大事件の現場となった場所の他、村上春樹の作品の舞台となった場所などを実際に訪れ考察した評論。野次馬的な好奇心でないのは分かったが著者の言う風景の暴力は正直よくわからなかった。ただ、人は同じ風景を見ていても各人の世界観といったフィルターを通して見ているため同じものは見えていないのは何となくわかる。それを他人に押し付けてくるのは暴力的なのではないかと思った。見えないものを見ようとしても真実は見えない。2020/12/06
takao
2
ふむ2020/10/07
タイコウチ
2
「風景」は見る人の心にある世界観の反映であり、共同体を失った人々のあいだに齟齬が生まれ、暴力による事件が引き起こされる。そんな視点で、連合赤軍、オウム、酒鬼薔薇など戦後日本を揺るがせた事件の背景が重層的に分析される。武田さんの仕事でいつも感心させられるのは、政治、社会科学、文学、思想、サブカルに至るまで、幅広い素材の組み合わせから有機的に紡ぎ出される視点の斬新さだ。村上春樹の暴力論が面白い。本書では原発問題にはほとんど触れていないが、寛容に支えられる公共性への道を探る「風景の政治」の今後の実践に期待する。2014/06/17
れぽれろ
2
人は風景に風景以上のものを見る。単に視覚像として風景を捉えるのではなく、そこに気分や世界観や物語を見てしまう。そして、自己が見た<風景>と他者の見る<風景>に齟齬が生じたとき、そこに暴力が現れる・・・。このような観点から風景を捉え、戦後の様々な事件(おもに暴力事件)の発生した現場を著者が訪れ、風景と暴力の関わりを考えようという本です。事実関係から事件の真相を解き明かすといった本ではなく、様々な視点から事件を捉え、現代社会を多面的に考える本です。かなり面白く、興味深く読みました。2014/06/28
sekitak
1
日本国内で大きく報道された事件とその報道の状況などを丹念に後から追い、時々でどのような風景を作ってきたのか、今の実風景と印象の風景を比べながら読み解く。 印象に残ったのは、宮崎勤、オウム真理教、阪神淡路大震災の新長田、それに森ビル。自分自身への影響を思い出す。 2014/09/21