内容説明
第一次世界大戦時、ドイツと同盟するトルコ帝国を内部から揺さぶるべく、アラブの反乱を支援するため英国が送り込んだ「アラビアのロレンス」。その戦いを綴った膨大な手記『知恵の七柱』を、自らの手で簡潔かつスピーディな文体で再編集した本書は、謎に満ちたロレンスを知るための入口である。
目次
ジッダ行
アラブの指導者
フェイサルの陣営
新たな任務
ウェジュフめざして
アラブ軍の増強
戦局の発展
アカバ遠征
炎熱とのたたかい
アレンビーとの会見〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kochi
21
『アラビアのロレンス』をBSで見かけたので、ゴソゴソと本棚から引っ張り出す。ロレンスの主著『知恵の七柱』の自身による要約らしく、第一次大戦当時の背景知識を前提としているから、理解しがたいところもあるが、映画の知識を総動員してなんとか読了。でも、ファイサルさんとかモハメッドさんがたくさん出てきたようです^_^ 本書に関して驚いたことは、解説を松浪健四郎が書いていることで、ロレンスを自身に重ねているような記載があって「ふーん」と。コップの水をXXした人かと思っていたが、意外。『知恵の七柱』を集めなくては。2018/03/11
ちぃ
11
『アラビアのロレンス』を読んだ時に、人間味が足りないと思ったが、本作はそれを見事に補っている。食べること、恐怖、虚しさ、暴力、そんな描写が物語にリアリティを添える。けれど、それにも関わらず、読んでいてどこかわくわくするのは、ロレンス自身がこの行軍をどこかロマンを伴う冒険として捉えていたことの表れだろう。ラクダが雪に埋まった際のエピソードの描写がすごく文学的。『アラブが見たアラビアのロレンス』『知恵の七柱』も読まなくては。あとトルコサイドの物語も。読めば読むほど、自分が何も知らないことに気が付かされる。2016/07/16
ま
9
映画等の前提知識ほぼ皆無だったので、周辺の史実を調べつつ何とか読んだ。解説の松浪氏(水かけ事件のあの人!)もいうようによくこれだけ仔細に記録したもんだ。イギリス政府の三枚舌外交とアラブの民との間で板挟みに遭うロレンスは中間管理職のようでもある。でも当時30歳くらいだという。2021/01/28
ちゃむ
3
映画「アラビアのロレンス」を見てから読みました。中東の地名などが沢山出てくるのでページを行ったり来たり…正直私には難しかったです。映画では変わり者に描かれていたロレンスですが、任務の為にアラブの人達の独立への情熱を利用している事に苦悩し、自らが歴史を作っているんだという高揚感よりもどんどん冷めていく心情が綴られていたのが印象的でした。2017/12/07
Masayuki Shimura
3
[果たされぬ想いと]部族や氏族ごとにバラバラであった人々を、「アラブ」という大義の下に結集させていく過程が描かれており、現在読んでも非常に興味深い。大きな歴史の前にロレンスの小さな歴史が呑み込まれていきながらも悩みぬくところが、彼が今日でも多くの人を惹きつけてやまない理由なのかなと感じました。2016/08/20