内容説明
「よもの海みなはらからと思ふ世に……」、それは本来言葉を発してはいけない天皇が、戦争を避けるためにあえて読み上げた御製であった。しかしその意思とはうらはらに、軍部強硬派による開戦の口実に利用され、さらに戦後の戦争責任にも影響を及ぼしていく……。御製はいかに翻弄されていったのか――知られざる昭和史秘話。※単行本に掲載の写真は、電子版では一部収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鯖
15
「よもの海みなはらからと思う世になど波風のたちさわぐらむ」日露戦争開戦が決定した折、明治帝が平和と国や民の安寧を願い悲痛な思いで詠んだ歌を、昭和帝が開戦の決断を迫られる御前会議で詠みあげた謎に迫る。ヒストリアで特集されてたので、手に取ったが、ページ数はあるものの散漫な印象。戦後渡米した折、この歌をふまえたと思われる発言もあったという指摘が興味深い。美濃部の主張する天皇機関説に「機関でいいじゃないか…」と呟いたという昭和帝。開戦の折、明治帝は泣き崩れ、昭和帝の御製のメモを持つ手はわなわなと震えていたという。2019/08/31
Meistersinger
2
御製「よもの海」が実は日露開戦が決まってから詠まれた、明治天皇の忸怩たる心情からのものであり、昭和天皇の意志に反して「開戦やむなし」と利用されていく。ただ後半に入り、和歌関係の他のネタも入り、少し混乱。「昭和天皇の空気による親政」は面白い観点だが、尻切れ的。これだけでも一冊書けそう。2015/01/16
Ohashi Akihiro
2
論証は確かにイマイチなんだけど、エッセイとして読めば非常にスリリングで面白い。2014/06/27
takao
1
ふむ2021/12/19
sasha
1
膨大な資料を突き合わせた労力は素晴らしい。だが、推測を重ねて築き上げた仮説に過ぎないんだよな。文章の流れにも一貫性がない。歴史検証ではなく、エッセイしとて読めばいいのかも。ただ、昭和天皇が昭和16年9月6日の御前会議で読み上げた明治天皇の御製「よもの海」が、戦後の訪米の際のお言葉に影響を及ぼしているとの話は興味深かった。お立場上、言いたくても言えないことがたくさんあったのだろうな。亡き入江侍従長が聞き取りをしていた記録も未刊行なんだっけ。2015/04/27