内容説明
摩訶不思議な「異界ツアー」へようこそ。猫の君子・夜見闇君の命を受けて旅に出た「私」は――。現代版・御伽草紙。動物植物昆虫にこの世あの世が入り乱れる奇妙奇天烈、珍妙な世界を、リズミカルな擬古文調でユーモラスに描き、読者を摩訶不思議な世界へと誘い込む表題作はじめ「かげろう草紙」「行方」を収録。詩人にして野間文芸新人賞作家の新境地傑作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
86
いつの間にやら頭の中でりずむを刻む文章の妙。森見登美彦、椎名林檎、講談、ラップが去来して、懐古趣味が音楽的にすらすらすらりんと摩訶不思議なるお話に結実したるは流石詩人であるなぁと感服。ヒグチユウコ様の妖しげなる絵も眼福。2016/02/15
優希
78
ふわっと不思議な世界に連れて行ってくれるような感じでした。擬古文の言語感覚が新鮮で、とてもユーモラスです。物語の雰囲気にしっくりくるような言葉遣いだと思いました。物語の合間に挟まれるカタカナ語がおかしくて可愛い。読み進めながら、自分が何処に迷い込むのかが見えずに歩いているような感じがします。3話とももう少し先が知りたいと思ったところで霧が晴れるように消えてしまう。だからこそ幻想的な空気感に包まれているのだと思いました。とても素敵な一冊です。本を閉じて表紙を見直すとより世界が深まった気がします。2015/11/18
かりさ
67
いやはやこれはもう美しくきらびやかな文章でありながら擬古文体に非常に読み辛いなぁと、これは難儀するのでは?と思いきや、一旦リズミカルに読みましたら、あら不思議するするんと読めまして。妖しく摩訶不思議な世界のすっかりとりこになりました。登場人物の名前も面白ければ語り手の合間に差し挟まれるユーモアな擬音も大変可笑しく終始むふむふと頬を緩ませてました。読み進むにつれ足元定まらずふわふわと異界へ迷い込み何処へやら。これはもう気になりましたらぜひに読んで下され。体感されたし。他「行方」「かげろう草紙」も素敵でした。2015/11/14
けろりん
62
ややっ!ヒグチユウコ絵師の、不気味かわゆき錦絵に、趣きある外題。いずれ御伽噺"ふぁんたじい"にやあらむと手にしたるこの草紙。いとやんごとなき麗しの黒猫君子・夜見闇君の御命にて、御蚕の繭君・終日君を懐に、佐佐目谷なる人やら場所やら定かならぬ先を尋ねてぷらぷら道行き。路銀尽きれば「我を売れ」との思し召しに唯唯諾諾、虹色に輝き給う繭君を売っぱらい、木賃に宿る体たらく。そもそも「わたし」と語るは人か猫か、はたまた妖か。摩訶不思議、言の葉の迷宮"わんだーらんど"へ、みなみなさま、ささ、ずず、ずいぃーっとござんなれ。2021/01/23
Ikutan
59
ヒグチユウコさんの絵がぴったりの摩訶不思議な物語三編。まずは表題作。何なん?この丁寧なようでふざけた文章、と思いながらも、いつのまにか、擬古文調のリズムが心地よくて、するすると。奇想天外な設定、難解な読み方の固有名詞に戸惑うも、ユーモアの溢れる内容にくすりとさせられながら、ワクワクと異世界を楽しみました。『かげろう草紙』は縁日の賑わいの中に、妖しげな雰囲気が溢れていて興味をそそられます。『行方』は読んだ時に既視感が…。日和さん、初読みなのに…と思ったら、以前に小川洋子さんの陶酔短編箱で読んでいました。2015/12/22