内容説明
春はどこへ向かうのか
米国同時多発テロ直後のパキスタン、そして“アラブの春”直下のエジプト、リビア、チュニジア、シリア――そこには常に、「弾圧のない自由」を求める名もなき人々の声があった。それらの声を伝え続け、2012年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した記者による、イスラム社会激動の10年の取材記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のら
1
NHKの一記者(とそのチーム)がパキスタンと現地アフガニスタンから見た9.11以降の紛争、カイロを拠点に見たアラブの春を振り返る。紛争と民主化という一見関連ないものが、一人の記者の取材を通じて繋がっていく。むしろ、その二つは形は違えどイスラム教への帰依なのだ。しかし、著者はアルカイダのようなテロが憎しみのみを植えつけ、却ってイスラムへの敵対視を増やしたことを指摘することを忘れていない。それにしてもジャーナリストの文章は読みやすい。自分の目で見、耳で聞き、足で探した情報は言葉を尽くした論文より遥かに説得力を2014/03/18
Pumpui
0
この手のノンフィクションは読む読まずに関係なく、知っている方だと思っていたが、この本はある作家のブログかツイッターで初めて知った。内容の濃さに今まで知らなかったのが恥ずかしい。アラブの春をここまで表わした文章はなかったのでは?2014/12/10
K
0
普段何気なくニュースで見ていたが、紛争地帯の取材は本当に過酷で、危険なのだと思い知らされる。たとえテロリストとされる人々にも敬意を払い、信頼関係を築いてはじめて可能になる、取材という行為。この本を読んだ後では、海外特派員が送ってくるニュースを以前よりありがたいと思って見るようになるだろう。アメリカがイスラムに敵対するからアメリカ人を殺すという過激派の言い分も理解できないが、アメリカが正しいわけでもない。ひとつの事象が見る人によって善にも悪にもなるんだなと思う。もちろん、無辜の人を殺す行為は憎いけど。2014/06/17
ふくさん
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9・11後の中東情勢を現地取材を経てアラブの春に至るまで検証した記者ルポルタージュ。日本人には不可解なイスラム世界の動きを事実に即し明快に著しており納得いたしました。大国にとり必要悪としての独裁者。犠牲となる無力な人々。妥協のない宗派間闘争など平和への道のりはあまりに遠い。アルジェリアで犠牲になられた日本人技術者など資源のない我が国は今後もこの地域と関わる上において無関心は許されないと感じました。2014/04/30
Masayuki Shimura
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【明滅するつながり】現代イスラム・中東史を把握するのにうってつけの一冊。いきなり本作から飛び込むと何が何やらということになってしまうかもしれませんが,一度かじったことがある方にとっては,そこから更に理解を進める上で素晴らしい情報を提供してくれるのではないかと。あと細かいことになりますが,登場人物の写真をページ下部に載せてくれているのが理解にとても役立ちます。2018/09/12