内容説明
『1Q84』とも『あまちゃん』とも違う狂熱の80年代が、ナショナル・パナソニックの企業城下町で、日夜、繰り広げられていた! 大阪芸術大学に通う〈僕〉が足を踏み入れた、狭い路地の奥の倉庫。まさしくそこが模型づくりの聖地であり、総本山であり、梁山泊である海洋堂だった。そこで、〈僕〉は、館長や専務、ボーメさんら原型師たちとともに、疾風怒濤の日々を過ごしてゆく──。〈世界に一か所しかないガレージキットの聖地で、原型師ではないけれど、自分にしかできない作業を任されているという気持ちは、一種の宗教体験みたいなものだったと思う。[……]ただ、僕らには神も仏もなくて、模型だけがあった。〉(本書より)。海洋堂公認! 本書は、草創期の海洋堂をディープに描く「おたく」な青春グラフィティ。日本のSFが「ニュータイプ」に突入した時代、特撮やアニメへの情熱はもちろん、オタキングこと岡田斗司夫氏との対決や、美少女フィギュアづくりの裏事情まで、現場にいた当事者の目からいきいきと痛快に物語る。海洋堂の「青春時代」はこんなにも物凄かったのか! と驚かされるエピソードが満載だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
23
まさに、青春グラフィテイという感じ。面白い。そんな拠点のあたりに、住んでいたこともあったというのが、読んでわかった。やっぱり、大阪だからこそなんだと思う。大阪以外の地では、考えられないと思う。そうなんだよね~、ゴジラは、毎回、顔つきが違うんだよね~。それにしても、持って生まれた才能プラス、好きこそものの上手なれということかと納得。2016/02/02
R
10
最近、少しだけ流行の80年代を描いたもので、サブカルチャーとも呼べるガレージキットなど、模型業界を中心に描いた昭和史読本でした。伝聞的な伝説も含めて、そこに集った面白おかしい人たちを生き生き描いていて楽しい本でした。業界に詳しくないので、深いところまではわかりませんでしたが、著名であろう原型師と呼ばれる人たちの逸話が詰め込まれていて、興味のある人にはたまらないのだろうとうかがえました。天才が集まっていた奇跡のような会社に見えるが、天才ばかりではなかったという分析はステキだと思いました。2014/10/17
ジュンジュン
8
海洋堂~「食玩」ブームを巻き起こした造形集団、そんなイメージを持っていたが、本書に登場するのはムーブメントを起こす前の、かなりディープなガレージキット(自主制作のプラモデル)工房。模型に夢中の登場人物達は滑稽で可笑しく、なのにちょっぴり羨ましかった。2018/05/27
Tenouji
8
2014年を終えるにあたって、この本と出合えたことを嬉しく思います。アオイホノオといい、大阪の片隅(大芸大付近w)で、そんな萌芽があったとは。「好きなものしか作れない」原型師の繊細な感性とモチベーション。神がかったセンムのトークと異業種サバイバル術。混沌の中の、そんなカガヤキが何かを産んでいくんだ、と思い知らされました。2014/12/29
スプリント
7
海洋堂を知ったのはチョコエッグのブームでした。本書はそれ以前の創業期からガレージキットブームを過ぎたあたりの1980年代について書かれています。損得抜きに自分の好きなことに熱中する人々のエピソードはどれも羨ましく感じます。その道を突き進む者もいれば完全に離れてしまう者、趣味として一線を引いて関わる者、色々な生き様があることがリアルに描かれています。2014/04/19