内容説明
〈記憶〉シリーズの著者の異色作 犯罪・虐殺を題材に執筆を続けてきたノンフィクション作家のジュリアンが自殺した。最愛の友の死の謎を突き止めるため、文芸評論家のフィリップは取材地を駆け巡り、やがて辿り着いたのは…… /掲出の書影は底本のものです
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
61
ジュリアン・ウェルズという犯罪・虐殺を取材してその本質を抉る作品を次々と発表している作家が自殺した。ジュリアンは行方不明になったアルゼンチンでガイドをしてくれた女性の消息を必死で探していたという。親友のフィリップは、その女性の失踪がジュリアンの心に暗い陰を落としていると考え、ジュリアンの足跡を辿り始める。アルゼンチンのガイドの女性は、何者だったのか。彼女への疑惑が深まる中、衝撃のラストに胸がつまされる。苦しみぬいたジュリアンに対してもう一人があまりにも平然としていることにも衝撃を受ける。2022/04/25
星落秋風五丈原
39
素晴らしきジュリアンはなぜ死んだのか?ヒントが数えきれないほど出てくる。フィリップは手掛かりにと取材のために自殺する前ジュリアンが立ち寄った先を訪れるが他の人の印象ががらりと変わっても、やはり彼のジュリアン像は揺るがない。砕くのは一体何(誰)か?答えは”幸せの青い鳥”と同じだった。次々と事件が起こるスピーディーなミステリではなく、ロードムービーのようにゆっくりと時間が流れていく文学作品のような雰囲気を持つ作品だった。もしフィリップの性別が女性で異性愛者だったなら、一種のラブストーリーになったのではないか。2019/05/23
りつこ
14
才能と正義感に溢れていた親友の自殺。その理由が知りたくて彼の足跡をたどり始める主人公。父に勧められて二人で旅したアルゼンチン。そこでガイドをしてくれた女性の失踪。彼が書き進めていた陰惨な事件の記録。ミステリとしての意外性やどんでんがえしはないけれど、じっくり読む楽しさに満ちている。最近のクック作品は暗さの中に少しだけ優しさがあってそこが救い。2014/05/12
sine_wave
12
作家ジュリアンの友人で文芸評論家のフィリップが、ジュリアンの自死の理由を探る旅に出る。相棒はジュリアンの妹ロレッタ。謎を明かす過程はクック流で好みに合わなければじれったいかも。解説にもあるが<我が子を喰らうサトゥルヌス>という絵を途中にでも見ておいたらと思われる。2019/10/13
キーにゃん@絶対ガラケー主義宣言
9
クックに導かれ辿り着く人間の心の暗闇とかすかな灯り。集大成とも言えそうだ。散りばめられた小説、映画のタイトルに思いも深く。「子供は戯れに蛙を殺すけれども、蛙は真剣に死ぬ」2014/04/11
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