内容説明
生きることは食べること――治療を一切受けず、食べる欲求だけで病気に立向かう主人公の壮絶な生き方。自ら末期癌と闘いつつ、最期まで創作を続けた著者の作品集。第112回(2011年)文學界新人賞受賞作。食道癌を患う中年女性の食への執着を壮絶に描いた表題作と、受賞後に自ら癌で死去する直前まで推敲していた絶筆「癌ふるい」を収録。凄まじいエネルギーが読む者を圧倒する、新たなる闘病小説の誕生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小梅
78
食への執着は生への執着でもあるんだろうか…衝撃的な作品でした。2017/08/24
安南
48
勤務先では《職場の癌》とまで呼ばれ疎まれていた麻美。勤労意欲なし、身なりに構わず恋愛にも興味はない。ただ一つの関心事は食。食事に対してはどんな面倒も厭わず毎食を丁寧に作り、食す。そんな彼女が45歳で皮肉にも食道癌に。治療を拒み体重が半分になっても食への執着は止まない。食べ物は痛みのあまり喉を通らず、食べては吐きを繰り返す。壮絶な食への欲望と癌とが、がっぷり四つに組んで闘う様は浅ましいを通り越して荘厳ささえ感じられる。「生きることは食べること」凄まじい祈りのような怪作。2015/12/25
こばまり
37
喉元に刃物を突き付けられるような強烈な読書体験でした。経歴から察するに看護・介護職にも身を置かれた方であったと思います。その彼女がこれを書いたことが衝撃的で。見事な死にざまを読ませて戴いたとしか今は言えません。2014/09/16
はつばあば
34
彼女の強さは食。祖母の教え、食べることで命をながらえる。病気の半分は癌だという。だからいずれ私もそうなるかも知れない。独り身の彼女のように私は最後までたくましくいられるだろうか。確かに人は死ぬものだが・・・食だけでなく人の暖かさにも包まれて最後を迎えたい。そして癌に対する三大療法(手術療法・化学療法・放射線療法)についてしっかり知識を得て、民間療法と比較して自分の終わりの人生を決めたい。・・・でもショックでパニくって頭真っ白で何も考えられないだろうな。シビアな本でした2014/09/30
roomy
27
子宮頸がんになったことはあるけれど痛みも辛い思いもせず日帰り手術で終わりました。食道癌だとこんなに辛いんですね。生きることは食べること、主人公のように著者も食べたのだろうかと考えてしまう。「癌ふるい」は読後ほっとできました。ステージⅣの癌がみつかったとき自分はどうなるだろうか、身内がや友人がそうなったら私はなんと言うことができるのか、想像つかない。2015/09/25