内容説明
“事故”により日本列島が居住不能となり、日本人は世界中の国々に設けられた難民キャンプで暮らすことを余儀なくされた。チベットのラサから2000キロ離れたここ、メンシイにも日本人の難民キャンプがある。国連職員としてキャンプを訪れた“私”の目に映ったのは、情報から隔絶され、将来への希望も見いだせないまま、懸命に「日本人として」生きようとする人々の姿だった――。3・11に先駆けること10年、破滅的な原発事故で国土を失った日本人を描き、日本人のアイデンティティを追究した予言的傑作「ディアスポラ」をはじめ2篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
116
2014/2/8 Amazonより届く。 2018/4/26〜4/28 原発事故で住めなくなった日本を脱出し、世界に離散した日本人を描く表題作の「ディアスポラ」、また汚染後の日本に留まり、目前のやるべきことをやり続ける人々を描く「水のゆくえ」。勝谷さんのロマンチストの一面が色濃く出た純文学。百田さんの解説も面白い。2018/04/29
百太
30
イベント【東日本大震災・あの日を忘れない】参加中。 日本人が難民となったら・・・日本の国がなくなってしまったら・・・ SFだなんて思えない怖さがあります。 2016/03/08
キキハル
21
これはもしかしたら起こり得るかもしれない物語。「事故」により国丸ごと被災地と化した日本を離れ、日本人は難民として世界中に散り散りとなる。「事故」の詳細は語られないが悲惨な状況からそれと察せられる。本書は、難民としてチベットのキャンプで暮らす人々と、汚染された日本に留まる人たちの2編を収めてある。酸素の薄い地で「これからもっといっぱいひどいことが起こる」と泣く少女。巡る春に花を咲かせる桜。死に続ける人々。故郷を国土を喪う苦しみや悲哀が淡々と突き刺さる。ディアスポラ・民族離散というタイトルが深く深く胸を打つ。2014/03/24
きょん
4
日本で甚大な「事故」が起こり、「一国離散」状態でチベットへ避難した人々を描いた作品。そしてダム建設が中止となった村で「事故」後もなお造り酒屋で酒を造り続ける村人を描いた「水のゆくえ」。どちらも今の私たちには他人事ではない、迫るもののある作品だった。大震災の10年前に書かれた作品。原発事故のもたらす亡郷、亡国の喪失感とそれでも流れていく日々の中での様々な感情。重い、しかし私たちが背負うべきものである。2014/04/15
とり
3
3 原発の事故で日本に住めなくなり民族離散(ディアスポラ)した話。チベットの難民キャンプと被曝しながら日本に残った人達の二本立て。生活に民族としての苦悩やその生活の中での苦悩が描かれている。百田尚樹の解説によると、純文学で売れないらしい。話に救いがなく読みやすいわけではない。2016/03/30