内容説明
黒船が来航したその年。喜平次はわけあって素性を隠し、渡良瀬川のほとりで渡し船の船頭となっていた。村人たちに頼られる存在となりつつあった喜平次だが、一体彼の目的――背負わされた宿命とは何なのか。舞台は幕末でも、「シミタツ節」と呼ばれたリリシズムと格調高い文体は健在。時代の転換期、武士としての誇りを失いかけた男が、己の進むべき道を見極める姿を描く、傑作時代長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keiトモニ
43
解説にも引用のある“渡し守に身を窶したことで自分を見直すきっかけに…この新しい経験が更に新しいものの見方ができるきっかけに…”と…そうありたいでしょうけどそううまくはいかんでしょう。身を窶つしてからでは見直す暇もなく次の…。まあいらんこっちゃな。“すみえの躰がわなないた、喉から泣くような声が漏れた…途切れ途切れの声で、もっと早くお会いしたかった”👈いいとこなのに、一瞬にして喜平次が跳躍するくらいの振動で善助らの押し込み強盗だよ。しかし春日屋“すみえ”“いち”栖原家“ゆふ”“はるえ”、喜平次はモテるねぇ。2019/11/16
Totchang
6
渡し船の雇われ船頭を務めることになった主人公の本性は何か。幕末の動乱を遠くで感じながら、農業から絹布の生産に転換していく田舎の村で起こったこととは・・・。楽しく一気に読み終えました。2017/05/24
たーくん
6
黒船が来航したその年。喜平次はわけあって素性を隠し、渡良瀬川のほとりで渡し船の船頭となっていた。村人たちに頼られる存在となりつつあった喜平次だが、一体彼の目的―背負わされた宿命とは何なのか。時代の転換期、武士としての誇りを失いかけた男が、己の進むべき道を見極める姿を描く、傑作時代長篇。一気読み。シミタツ節全開。時代小説たけど、中身は冒険小説。主人公はいつものように、理屈っぽくて、女々しくて、繊細で、かつ大胆。だけど正義感は強い。いつも共感してしまうのは、自分と似ているからか…。2016/03/13
ラスカル
5
武士でありながら渡し守りとして働く男。謎が徐々に解き明かされていく。舞台設定が巧みだ。時代小説だけどハードボイルド小説を彷彿とさせエンターテイメントとして楽しめる。2014/02/22
トラジ
4
ハードボイルド時代小説。シミタツ節顕在!ストイックで控えめで漢らしい。そんな喜平次に惚れました。2015/07/27