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内容説明
差別,侮辱,排除の言葉の暴力を,路上やネット上で撒き散らすヘイト・スピーチは,表現の自由として守られるべきなのか.深刻な被害は,既存の法や対抗の言説では防げない.悪質な差別の法規制は,すでに国際社会の共通了解だ.各国の経験を振り返り,共に生きる社会の構築へ向かうために.
目次
目 次
はじめに
第1章 蔓延するヘイト・スピーチ
1 マスメディアに登場した「ヘイト・スピーチ」
2 京都朝鮮学校襲撃事件
3 狙われるマイノリティ
第2章 ヘイト・スピーチとは何か
1 ヘイト・スピーチの定義
2 ヘイト・スピーチの害悪――傷つけられるマイノリティ
3 ジェノサイドの経験と国際社会の認識
第3章 法規制を選んだ社会
1 イギリス――多民族社会の模索
2 ドイツ――負の歴史と向き合う
3 カナダ――国際人権基準から見た一つのモデル
4 オーストラリア――多文化主義への転換
第4章 法規制慎重論を考える
1 アメリカ合衆国の選択
2 日本における法規制慎重論
3 法規制慎重論の検討
第5章 規制か表現の自由かではなく
1 現行法で対処可能なのか
2 包括的な制度構築――調査、差別禁止法、救済制度
3 ヘイト・スピーチ規制条項の検討
あとがき
主要参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
活字スキー
28
自ら進んで本書を手に取る人は既にヘイトスピーチについて一定以上の問題意識を持っているだろうし、今現在ヘイトスピーチを行ったり、それについて何らの問題意識も認めない人は本書を読もうとはしないだろう。そんな現状をいかに改善するか。何はともあれ、まず問題の有無を含めた実態を確かめるところから始める必要があるのだが、本書によれば我が国は国際標準からして甚だしく不誠実、不十分な対応しかしておらず、面倒な、あるいは政府にとって不利益となりかねない事柄については「アーアー知らなーい聞こえなーい」というのがお約束らしい。2019/02/20
ふろんた2.0
28
よくわかっていなかった部分がクリアになったのと同時に、ネットのニュース等で得ていた情報とだいぶ印象が異なった。本テーマに限らず、ネットの記事って恣意的にカット&ペーストされてたり、検索ワードの入れ方で印象がどっちにも転ぶので、ソースまで辿らずに、眼前の情報から反射的に判断することは危険だなと思った。2014/02/26
めんま
20
ある社会や集団において非支配的な存在であるマイノリティに対する言葉による暴力であるヘイトスピーチについて学べる本。物理的な暴力とは違い、その傷は見えにくいが、ヘイトスピーチを受けた人は確実に心に傷を負う。日本では表現の自由や権力による規制の濫用を理由に、ヘイトスピーチの規制に慎重な意見が多いが、今も暴力を受け続けている人がいるなかでは、思いきって刑事的な規制も必要なのであろう。2021/06/03
ラウリスタ~
20
この手の新書を読むのもだいぶ久々に思う。ひとつ言えることは、どうやらヘイト・スピーチの現状はかなりひどいってこと。そして、この本の著者に代表されるように、それに反対する人と左翼系の人が同一視されてしまうことで、現在の匿名ネット掲示板のような風潮が容易く生まれるということ。なんでもかんでも安倍批判、アメリカ追従批判、反反原発批判などなどへ無理矢理繋げることでいらぬ反感を生むだろうから、関係のない批判を混ぜないほうが良かっただろう。もっとも「ニュートラル」な人が事態を見てみぬ振りをしていることがより問題。2014/11/09
coolflat
18
ヘイトスピーチ法規制に関し、反対論者からは、表現の自由(法規制されると、政府批判や運動の規制に濫用される)や、対抗言論で解決しろとか、法規制するとヘイトスピーカーが潜在化し、より危険な暴力行為に走るとの主張がなされていたが、それらがいかに意味のないことかよく分かる。元々、ヘイトスピーチをする者は、マイノリティをターゲットにし、自らを安全圏において攻撃を仕掛けている。合法なら、ますます安全圏に置かれることになるし、またマイノリティ側が反論しても、奴らは相手を蔑視しているため、そもそも対等な言論が成立しない。2017/12/20
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