内容説明
ぼくはタマオ。真っ白な猫だ。生まれたばかりのぼくの命を救ってくれた理々子に恋をしている。ある日あやしい車に追いかけられた彼女を助けようとしたぼくは青年の姿になっていた。夜限定の変身、寿命も縮む。でも愛しい理々子のために……。大人気「猫弁」シリーズの著者による、せつなすぎる涙の恋物語。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
244
夏目漱石『我輩は猫である』を端にする、由緒正しき猫一人称視点小説。但しファンタジー要素含む。個人的にはねこ視線語り以外のファンタジー要素は無ければそれに越した事はないと思いましたけど。仔猫の時分に助けてくれた理々子さんを女神と敬うタマオの物語でね。人がねこを敬愛する描写はままありますが、逆は珍しい感じですね。でもその佇まいはきちんとねこねこしていて好い感じです。ねこ仲間の黒ねこちゃんイヴも、別の形で飼い主を慕っていて、相乗効果を発揮していて好いですね。楠さんも泰然としていてナイス。2023/03/18
しいたけ
104
その昔、つうは救ってくれた与ひょうのため、命を削って機を織った。タマオは、真っ黒なゴミ袋から救ってくれた少女を、命を削って守ろうとした。健気で小さな恋が、真っ白な雪に溶けていく。想いが通じたかとか、報われたかとか、幸せだったかとか、そんなことはどうでもいい。ただ、恋だった。つうもタマオも、命を懸けてお返しすること。それが真っ白な恋だった。「この世界をくれた女神を、命が尽きるまで愛そう」「生きてる間は一緒にいられて幸せだっただろ?振り返ってみろ。あんたは幸せものなんだ」2017/02/21
ひろ
98
大山さんの著書は『イーヨくんの結婚生活』が初読みだった。優しい物語に胸が熱くなって涙がポロポロこぼれた。そして次に手に取ったのが『猫弁』。頭脳明晰でピュアな主人公・百瀬太郎に惚れた。まさに私の理想の男性だった。そして本書は、2012年に出版された大山さん三作目の著書だ。「ぼくはタマオ。真っ白な猫だ。生まれたばかりのぼくの命を救ってくれた理々子に恋をしている」珈琲を飲みながら、一気に読んだ。クライマックスは息を止めて読み、ラストシーンで涙がポロポロこぼれた。猫弁の作者だからこそ書けるファンタジーだと思う。2018/01/24
はる
88
切なくも温かい。人間の少女に恋をした猫のタマオの物語。こういう設定だとやたら甘すぎて薄っぺらい展開になりがち。でもこの作品は違った。様々な要素が盛り込まれていて物語に厚みがある。特に猫特有の習性や、人間に対するシニカルな視線、軽妙なやりとりが面白くてどんどん引き込まれます。全体を通して描かれるのはやはり人間と猫とは違う、という悲しみ。だからラストは…ああ、何て切ない…。おぬいばあさんが個人的に凄く好き。2019/04/12
パフちゃん@かのん変更
82
昨日『キミスイ(君の膵臓を食べたい)』で泣いたばかりなのに、二日続けて泣けました。猫弁の大山さんです。猫弁に出てきたテヌーが出てきて嬉しい。解説の成井豊氏の解説が的を得ている。そうだ、大山氏の主人公はとてもピュアでだから惹きつけられるのだ。一般にネコは薄情な動物という事になっているが、白猫のマタオも黒猫のイヴも命を救ってもらった理々子、城太郎を女神や天使と崇拝している。身を捨ててもいいほど愛している。最後も美しい。2015/09/04
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