内容説明
暴力男の留守を狙い、一週間ぶりに外出した瑛。公園で出会った謎の中年女は、『森のくまさん』を歌って言った。この歌にはあなたへのメッセージが隠れてる。「お嬢さん、今すぐそこから逃げなさい」。瑛は南へ旅立ち、ホテルで一本の留守番電話を聞いた。「ボート乗り場に十時でいいですか?」。瑛は待ち合わせ場所に向かうことを決める。それが運命を劇的に変える出会いだとは知らずに。直木賞作家渾身の、希望溢れる長編小説。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
66
こんなにも魂の呼応を感じ取れる小説、今までにあったろうか。7歳のニノと21歳のテル。全然関係ない二人だが不思議と惹かれ合う。ニノが陰でテルが陽。それはニノはテルを見つけられるが、テルはニノを見つけられないことで示されている気がする。二人は世間の常識をはねのけ自分たちで人生の決断をする。小さいからとか若いからとか、そんなことは意味をなさない。彼らには信念がある。間違った道を歩む時もあった。離れてしまう時もあった。でも絆は消えなかった。ラスト、二人の凱旋。抱きしめてずっと寄り添っていたくなるそんな優しい小説。2017/07/24
ぶんこ
52
暴力男から逃げる瑛と、謎の灰色男から逃げるニノ。 二人の逃避行を応援しつつ読み進め、佐藤屋のおばあさんの存在にホッとしました。 必要とされる、働けるって素晴らしい事だと瑛の働きを見ていて思いました。 ところが鯨谷君との一夜でガッカリ。 瑛さんの考え無しなところが現れていました。 このままではニシムラさんと別れても同じ事を繰り返しそうです。 最後は佐藤屋さんのおばあさんの所が瑛とニノの安息所になりそうでホッとしました。2015/08/30
akio
35
DV男から逃げるテルと謎の灰色男から逃げる小さなニノ。舐めあうでもなく次第に馴れ合い、強い絆で結ばれていくふたり。悲壮感がないのは逃避行というより夏休みの感覚で綴られているからかもしれません。「森のくまさん」から始まる挿話が連なって、煙に巻かれたかと思えば、いつしか子供を守る神様の物語のようになっていく不思議な感覚。ラストシーンの何にも脅かされず、花がほころぶように輝くテルがとても眩しくうつりました。2019/02/15
エドワード
25
21歳の小森瑛は、DV男から逃げ出し、新幹線に飛び乗って西へ行く。南の町で出会った7歳の少年・ニノは孤児で、灰色の男に外国へ連れていかれると言う。南国の明るい光に彩られた二人の逃避行。シャッター商店街の砂糖屋、単線の電車、島へ渡る船、サントニーニョ。美しい風景が目に浮かぶ。逃げているんだけど、夏休みの旅のようなロードノベル。劇中劇のような物語が所々に挟まり、教科書体がいい味を出している。ニノを探す灰色の男は、彼の将来を憂慮していた。ニノを説得する任務を負った瑛はどうする?永遠の夏休みを得る至福の終幕。2016/02/15
まる
19
大好きなみをつくしシリーズのなかで、「逃げるのは間違いではない。ただ、逃げて苦しみが深まったのならば逃げるべきではない」という言葉がありました。今作で逃避行に出るふたりは、まさに希望に向かって「逃げて」いる。DVや国籍問題などテーマは重いのですが、その明るさと南国の空気感のおかげで、ファンタジックなロードノベルになっています。救いのある結末にホッと一息。2016/06/06
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