岩波新書<br> 医学的根拠とは何か

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岩波新書
医学的根拠とは何か

  • 著者名:津田敏秀
  • 価格 ¥792(本体¥720)
  • 岩波書店(2014/03発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004314585

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内容説明

日本では医学的根拠の混乱が続いている.そのため多くの公害事件や薬害事件などで被害が拡大した.混乱の元は,自分の臨床経験を重視する直観派医師と,実験医学を重視するメカニズム派医師である.臨床経験の数量的分析(疫学)という世界的に確立した方法が,なぜ日本では広まらないのか.医学専門家のあり方を問う.

目次

目  次
   まえがき

 序章 問われる医学的根拠――福島・水俣・PM2・5

 第1章 医学の三つの根拠――直感派・メカニズム派・数量化派――
  1 繰り返される三つ巴の論争
  2 現代医学の柱は数量化、対象は人
  コラム1 病気のメカニズムがわからないと原因はわからない?

 第2章 数量化が人類を病気から救った――疫学の歩み――
  1 数量化を始めた人々
  2 疫学の現代化
  3 病気の原因とは何か
  コラム2 タバコをやめるとがんのリスクが減るが、それは真の原因を取り除いているわけではない?
  コラム3 疫学でわかるのは相関関係であり、因果関係ではない?

 第3章 データを読めないエリート医師
  1 数量化の知識なき専門家
  (1) なぜ一〇〇ミリシーベルトか――「有意差がない」と「影響がない」の混同
  (2) O157による大規模食中毒事件
  (3) メカニズム派のリスクコミュニケーション
  2 水俣病事件
  3 赤ちゃん突然死への対応を逸した研究班
  コラム4 食中毒事件において食品に関する営業停止処分や回収命令を出すには、その食品中に原因となる細菌あるいは毒物を検出しなければならない?

 第4章 専門家とは誰か
  1 進まない臨床研究
  2 日本の医学部の一〇〇年問題
  3 診察室でデータを作る時代
  コラム5 病気には遺伝要因が強いものと環境要因が強いものがある?

 終章 医学部の“開国”を
   あとがき
   参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

更紗蝦

19
医学において統計学がどれほど重要か理解できる本です。「個別の観察だけをいくら続けても因果関係は定まらないため、統計学による数量化で分析を行う」という方法は、まるで量子力学と同じです。いまや物理学方面の研究者で統計学を蔑ろにしてる人はいないはずですが、医学方面においては日本ではずっと蔑ろにされており、その理由は「人間を対象とした研究をしない」という傾向や、医局講座制という古いシステムへの固執、官僚の無知や無理解、「メカニズムの追究こそが最先端の研究」という勘違い…などが挙げられます。2017/06/26

SGM

16
★☆☆筆者は数量化派、つまり統計的手法を用いた科学的根拠こそが最重要であると説く。しかし、統計というのは、人間の意識によって非常に影響を受ける。それが意識的か無意識的かは別として。そのあたりに対する説明がなかったのはやや偏った視点である。ベルナールという医師を知れたことは有益であった。2017/02/20

壱萬弐仟縁

16
人間一人一人を観察対象とした臨床研究や医学研究はほとんど行われていない(ⅰ頁)。わたしの母親は8年ほど前、心臓の権威F先生に症例として学会報告の依頼を受けた。それだけ特殊事例であったことなのだが。F先生は命の恩人である。記して御礼申し上げる。医者をはじめ、人間の不思議な健康と病気の関係は、人間の複雑さをどう考えるか、学際的な検討が必要だと思える。近代統計学の創始者ピアソンは学部時代に学んで思い出した(29頁)。図2-3科学の営みの概念図では、観察の世界と概念の世界の帰納と演繹の関係がわかる(88頁)図式。2014/01/21

tapioka

14
タイトル通り医学的根拠の話。経験・直感や人間以外の動物実験による生物学的研究が日本医学の根拠として主流だが、統計的な考え方を根拠とすべきと終始述べています。一方で、医学は患者とよく向き合うべきとも言われているので、筆者はあまり述べていませんでしたが、私は統計は原因解明や対処へのアプローチとして使うには相応しいのではと思いました。それでうまくいかない場合は患者個人に合った対処法を考えるべきですし。また、全体的に事例説明がクドイと感じるほど多かったので読んでいて苦痛でした。もっと持論を展開して欲しかった。2014/04/23

mit

13
本書では日本の医学界ではEBMは無視されているように書かかれているが、実際にはEBMや臨床研究の本は大人気で、EBMを実践しなければ時代遅れという風潮であり、本書の記述には違和感を感じる。とはいえEBMが大部分の臨床医に浸透しているとは言えず、医学教育は知識偏重であり、考え方はほとんど教えられていない。また日本が統計学に弱いのは医学の世界だけではないだろう。医学部が封建的な世界であり権力に弱いというのも、学術界としては大きな問題だ。著者の意見は重要であるが、自身の主張が主観的である点で、ズレている印象だ。2015/04/11

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