内容説明
日本人の心の中に「大石内蔵助」という名は一つの男の理想像として刻み込まれている。しかし、このイメージは、実は歴史上の実像とは隔たりがある。それでは、「忠臣蔵」という共同幻想をつくったのは、本当はだれなのか。そして、この壮大なフィクションは、なぜこれほど日本人に愛され続け、『仮名手本忠臣蔵』はどのようにして歌舞伎最大の古典となったのか。明晰な構成と文体で鮮やかに描き出す、第一人者による意欲作。(講談社学術文庫)
目次
元禄十四年三月十四日―口の暦
近松門左衛門の手紙
「文盲」の吾妻三八
もう一人の大石内蔵助
竹田一族の興亡
元禄十五年十二月十四日―中の暦
中村松江の恋
尾上菊五郎の性根
偏癡気先生の視点
粋と肚
元禄十六年二月四日―切の暦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
筋書屋虫六
2
歌舞伎史上最大の当たり狂言「忠臣蔵」が、如何に誰によって作り上げられていったか、なぜこれほどまでにうけるのかの謎に多角的に迫る1冊。江戸町民を熱狂させた史実としての赤穂事件を端緒にしつつも、芝居狂言の「忠臣蔵」は完成されたフィクションとして熟成された。最初の物語を書き上げた吾妻三八は文盲と言われた作家だったし、大星由良之助や勘平・お軽の人物造形は、沢村宋十郎や中村松江ら、時代と時代を渡って、役者の芸と身体を通し時代の呼吸と反応して作り出されていた。すみずみまで、最後まで読み応えがあった。2014/04/20
絶間之助
1
国立劇場で仮名手本忠臣蔵の歌舞伎、文楽の通し狂言が掛かるので、積読本を読みました。作者の吾妻三八、竹田出雲、役者の宗十郎、松江、団十郎、菊五郎達が、史実の大石内蔵助とは別のオオボシユラノスケの人間像を作る。それが今に続く人気狂言として受け継がれているという説。歌舞伎ファンには、九代目団十郎の肚、五代目菊五郎の粋の芸の説明が面白かった。特に菊五郎の勘平は、細かいところまで積み上げた所作の型があって、それぞれ意味がある。今月の七代目菊五郎はどうでしょうか、楽しみだなあ。2016/11/07
深川拓
1
事件の歴史的実像を検証するのではなく、如何にしてこの出来事が日本人にとって重要な“物語”に発展していったのか、を資料に基づいて解き明かした作品。『仮名手本忠臣蔵』に物語の基礎を仕上げた吾妻三八、“大石内蔵助”という記録からは充分に窺い知ることが出来ない人物に明確なキャラクターを肉付けしていった歌舞伎役者たち、そしてその背後にある日本人の道徳意識や文化の変遷までも垣間見せる。オリジナルは30年以上前の刊行ですが、いま読んでも説得力の感じられる、そして一読『忠臣蔵』に対する見方が変わる好著です。2014/02/18
shellgai
0
今、日本人が持っている大石内蔵助のイメージが、実際の大石から離れて、初代澤村宗十郎、初代尾上菊五郎、九代目市川團十郎らによって演じられる仮名手本忠臣蔵の大星由良助を通じていかに作られていったかが詳しく分析されていて、なるほどとうなずきながら興味深く読みました。今後、忠臣蔵をより深く観ることができそうです。2014/01/29
正親町三条ペペ
0
【草稿】一気呵成、隙間時間の暇つぶしのつもりがのめり込んで読んでしまった。 記録を通して再現する赤穂「事件」と忠臣蔵の「芝居」。 赤穂事件、忠臣蔵に織りなす人々の息を丹念に追い続ける筆致によって、骨太の日本人論となった感がある。 虚実織り交ぜた忠臣蔵を、虚実に生きた人々のドラマとして解体する面白さ。 森鴎外の歴史小説の読後感に等しい。2020/06/09
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