内容説明
シーナワールド最高傑作の「新装版」。
戦慄せよ! この「未来」に驚愕せよ! この「世界」に
想像せよ! この「物語の背景」を壮絶な戦争が終わりを告げてから、二十年近くが経過した地球。
都市や道路は破壊され、化学兵器や放射能に汚染された海や森には、異体進化した危険生物たちが蠢動する。
この文明も国家も崩壊した終末世界で、物資と食料を狙い跳梁跋扈する組織略奪団や「北政府」と呼ばれる謎の勢力と闘いながら、たくましく生きる男たちがいた――。
シーナワールドの真骨頂ともいうべき、独特の言語感覚によって描きだされた圧倒的世界観は、一九九○年の単行本発売と同時に、世間を震撼させた。
その傑作SF小説が二十年以上の時を経て、「新装版」で復活!
(底本2013年11月発売作品)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つくよみ
52
★★★ そう遠くない未来。北政府との戦争後、荒廃した世界の底辺に、油と泥にまみれながらも、こびり付くように逞しく生きる人々の物語。各話にゆるいつながりがある、7編からなる連作短編。物語を通して何か大きな事件があったり、登場人物達に明確な目的意識などが有るわけではなく、その日その日をただ生き抜いていく。その様がリアルな質感で描き出されている作品。独特の世界観が、どこかユーモラスな擬音の数々で彩られ、読んでいるうちに、テンポ良く物語に引き込まれるのも魅力的。この世界の行く末を、もっと眺めて見たくなった。2013/11/29
saga
33
著者とはアウトドアを趣味にしている頃に野田知佑氏つながりで出会った作家だ。ただし著作は『わしらは怪しい探検隊』1冊しかもっていなかった。現実世界のどこにもない地理的背景の地名と、同じように有り得ない人名。核戦争と思われる戦後の荒廃した世界というのはステレオタイプだが、飽きることなく読み進めることができた。油泥の海に出帆した島田倉庫の行く末が気になるな~2016/02/24
そふぃあ
22
多くは語られないので分からないが、おそらく戦争の末大量の油脂に沈んでしまった世界。強靭で獰猛に変貌した生物の織りなす厳しい生態系の中で、しぶとく生きる人間たちの連作短編集。『アド・バード』でも思ったが、ユニークな造語をふんだんに用いることで、多くは語らずに深みのある世界観を創るのが上手いと思った。『水域』も読んでみたい。2023/01/08
ぺぱごじら
21
お久しぶりの椎名誠さん。ぼく自身は椎名さんの『岳物語』のような私小説が好きなので、自分が学生時代に刊行された本作のほか『アド・バード』『水域』などの『シーナSF』は全く読んでいなかった。だって話がとことん暗いんだもん(笑)。今読んでみると『あぁこの頃の短編というのは、一編30ページ位の本当に短編だったよなぁ』と懐かしく思い出される。私小説だと、割とうねうねしがちな椎名さんが、何故かSFだとかっちりと行儀よく『気をつけ』するスタイルの違いがたいへん面白い。2013-1952013/11/29
Sakie
14
「戦争」から20年経った日本。国の統治は形骸化し、生き残った人間は敵や略奪者、突然変異のぬめぬめした生物らと戦いながら遺物を漁って生きている。架空の世界、架空の地名、架空の出来事なんだからSFだろうが、変てこな固有名詞ばかりの、見たことのない異世界だ。そしてやたら生臭い。水辺は油まみれの泥濘に変わり果て、汚れた油で厚く覆われた海面が、さざ波すら立てずにてらてらとのたる世界。青くない海。それこそがシーナさんにとってのディストピアの象徴ってところが面白い。"招魂酒"と書いて(ふぬけ)。わぁ、飲みたくないわぁ。2019/08/12
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