内容説明
19世紀のパリ。赤いネオンで男たちを誘う娼婦の館があった。男たちがあらゆる欲望を満たし、ときに重要な社交場になった「閉じられた家」。パリの夜の闇にとける娼館と娼婦たちの世界に迫る画期的文化論。
目次
大きな赤い番地の光
博士の異常な執念
隔離された女たち
メゾン・クローズの女将の条件
良い娼婦とは何か?
娼婦を調達する方法
娼婦のトレード
裏方に回る娼婦たち
スカウト最高の「漁場」
快楽を味わうためのインテリア〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
41
パリの娼婦の2巻本を再構成した片割れ。前回は私娼で、本巻は公娼を扱っている。エマニュエル・トッドが家族構成の違いからマルクス主義に対して問題提起をしたように、人間が嘘を付けないものから真実を追求している。女将の役割が、ジェンダーは女でありながら別種の男であり、社会的にはキリストを生涯の夫として未婚を貫く修道女の集まりである女子修道院長と役割を一にしているという鋭い指摘にはじまる。抑圧と放縦。全く異なる社会の中に、構造的に同じ欲望の別種の装置をみつける。娼婦になる理由のひとつに女の子の浪費癖があるが、その子2025/08/29
Miyako Hongo
15
古本屋で見つけて即買い。□1930~のフランスの娼館の資料本。娼館が公に認められていた背景と制度、運用などなど。高級娼館内部の写真やプレイの写真が載っていて妄想を掻き立てる。ヨーロッパの変態にムチフェチが多い訳や、スカトロジストの細分類、疑似恋愛と抜き産業が分化しているのは日本だけという考察や、ノーパンしゃぶしゃぶやイメクラや覗き部屋がこの時代にすでに存在したことなどなど...面白いネタテンコ盛り。□”衣食住足りて変態を知る”とか”金銭と肉体との等価交換”とかの名言多し。面白くて一気読みでした。2014/10/25
長野秀一郎
12
19世紀パリの娼館についての入門書。元々は別の2冊の本であったものを再構成したせいか全体としての構成に乱雑さが見られる。個人的には冒頭で「待合(戦前の料亭・茶屋)について書きたい」と語っていたが、個人的にはそちらも読みたい。ともあれ日本で言えば江戸~明治期に日本のそれと同様の業態が仏にあったことは興味深い。またこんにちでいうところのクラブ・キャラバクラ?的な役割を果たしていたとかも面白い。評価4-。2017/02/26
takam
9
性風俗関係のビジネスは長い歴史を持つものの、時代や地域を超えた普遍性を感じる。SMクラブに通う地位の高い紳士や妄想を原体験できるようなイメージクラブのような遊び方が19世紀からあったことに驚く。そして、娼婦の心理をうまく使った循環ビジネスの構築までされていて、今の週刊誌が描く風俗店と似たような実態が描かれている。性について人間は大きく進歩していないという点で、娼婦相手にしか本能を出すことはできないのかもしれない。一方でその本能を相手する娼婦も感情ある生き物のため、心が擦り切れている感じに救いがなかった。2019/10/23
hiroshi
7
鹿島茂である。フランス文学者・評論家であり近頃はエロの事ばかり書いている。もちろん決してふざけているのではない。ゾラもモーパッサンも、そしてユゴーのファンティーヌも「売春」「娼館」なくして語れないのだ。変態も貧困も性病も含めて社交場でありサロン。むしろ「社交(キャバクラ等)」と「“射精”風俗」が別業態として成り立つのは日本くらいだとし「日本独特のものであり、国際的な比較社会学研究にも値する」なんて唸ってしまい笑ってしまった。2020/09/27
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