内容説明
文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年のとき卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋、珠玉の喜嶋語録の数々。学問の深遠さと研究の純粋さを描いて、読む者に深く静かな感動を呼ぶ自伝的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
168
アカデミア理科系研究室のダークサイド部分(=内在性理論)がリアルで当時直接および間接的に経験したことを思い出してしまいました。でもこれってワールドワイドなんですよねぇ。これはある意味社会の縮図なんだろうな、と思いました。2021/07/05
ふう
82
大学で出会った喜嶋先生。「研究の王道」を進み続けるその先生に惹かれた主人公が、研究のすばらしさと先生の魅力について語ります。科学とはかなり遠いところにいるわたしでも、あゝそうだよなと共感し、登場人物それぞれに好感が持てて心地よい作品でした。名誉や評価のためではなく、ただ研究することがおもしろくて没頭する。研究以外のことで時間や労力を消費したくない…。そんなふうに生きる先生に愛情を感じた人がもう一人。でも、最後にその人が幸せになれなかったことが何だか引っかかっています。凡人の尺度ですね。2021/04/08
matsu04
69
「教室で講義を聞き、試験で無難な解答を書いて単位が取れればOKというのは本当の大学ではない」…うーむ、確かに。論文とはどういうものなのか、そもそも研究とはどうあらねばならないのか…、ふむふむ、なるほど。やっぱり理系の人はすごい。2016/03/14
akira
69
シリーズ外小説。 もの凄く良かった。長く忘れていた探求心、学ぶ意欲を猛烈に掻き立てられる。 短篇集も鮮烈だったが、本作はさらに秀逸。なかでも、研究生活において挑んでいく様は、もはや命がけといっても良い。全てを捧げ、考えに考え抜いていく。喜嶋先生の本質を突く言葉の数々。鋭く刺さる。 有名な慣用句として使われる王道は、実に稚拙。森博嗣が解釈するように、歩くのが易しい近道ではなく、勇者が歩くべき清く正しい本道こそそれであろう。文字通り、別次元の思考と覚悟がそこにはある。 「学問には王道しかない」2013/11/10
ソラ
63
森博嗣作品の中でシリーズ外の中では最も好きな作品。どこが良いとかそういうところはなかなか自分の中で言語化できないけれども、しみじみと良かったなと思う作品。2013/10/20