内容説明
8時09分、瑞希は決まらない髪型に悩み、10時24分、貴大は里中さんを好きになる。12時46分、遠足のグループ決めで内海がひとりあぶれ、12時59分、みちるはどうしても嫌いな人に嫌と言えない――。中2思春期、やっかいだけど輝いている、それぞれの事情。野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞受賞者が描く、「今日」の「この時間」。誰もがかつて、そして今、2年C組の誰かだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
139
ある町の中学二年生の朝から夜までの生活をオムニバス形式で描く小説。C組の様々な個性を持った生徒一人一人に光をあてる構成が素晴らしい。この年代は生きづらさが始まる頃で、読んでいて息苦しくなる所も多かった。特にいじめの描写は迫真的で、いじめられる子の悲しみや苦しみが痛いほど伝わってくる。クラス内の人間関係に気を使いすぎる女子達は痛々しい感じだ。それでも初恋や友情、異星に対するほのかな憧れといった瑞々しい内容も含んでいる。一番好きだったのは最後の「家族」だ。平凡な生活の中にある温かさが胸に沁みる。2015/08/29
やっさん
115
★★★☆ 38人学級には38通りの人生があり、抱える問題も十人十色。そして担任から見えている部分は、その表皮の薄い一部分だけ。理解しようとするのではなく、開示させられる関係を作らないと、担任業は務まらない。2023/10/19
Mumiu
81
中学校ってなんでああなんたろう。わたしの頃でさえ不登校の子もいたし、中学と高校はとっとと過ぎ去ってほしいなあって毎日みたいに思ってた。男の子たちが微笑ましい一方、女の子たちの生きづらさがありあり。いろんなものが許せなくて、優しい言葉も嬉しい反面鬱陶しくて、まわりのみんながきらいで、でもそんな自分がもっときらい。そんな日々も「テキスト」になって振り返る日がきっと来るよ!しんどかったら逃げるのもアリだよ⁉︎2014/07/21
ソラ
78
中学生の気持ちを描くのが上手いなぁと思った。しかも特に何もない1日をこれだけの人数かき分けるのは凄いなと。何となく自分が中学生だったときはどんな感じだったかなぁって振り返ってしまう作品でした。2014/03/15
七色一味
59
読破。とある中学2年C組の10月19日月曜日の1日を、朝から追った「その日」の物語。なんとなく『桐島、部長やめるってよ』に似た雰囲気があると思ったけど、単行本の出版年も同じかぁ。まぁ、偶然だろうけどさ…。帯の言葉は無視するとして、ここに収められているのは、ありきたりな日常の風景。華やかな空気も薄く、弾けるような明るさも妙に白茶けた感じ、そして悩みすらもどこか醒めた目線。笑いも作り物めいた、ぱりっと音をたてて割れそうな空気。ドラマチックな展開はないまま、1日は過ぎてゆく。2014/05/19