内容説明
日本を壊滅寸前にした震災から4年後、刑事崩れのヤクザ巽は不思議な少年・丈太と出会う。彼の出生の謎、消える子供達、財宝伝説--全ての答えが禁断の地お台場にあると知った二人は潜入を試みるが--!?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
papako
72
なぜか読んでる伊予原作品。ありえたかもしれない日本の物語。国籍って難しいんですね。血統主義って!何様?しかし日本で生地主義というのも難しいのか?よって立つ拠り所としての国籍は必要なのかもしれませんが、せっかく生まれて『日本』にいるのにいないことになるって悲しい。巽の死が丈太の生きる支えになればいいなぁ。ちょっと長いし、そんな理由?と思う場面もありましたが、結構楽しめました。作者お得意の博士があんまり活躍しなかったのがもったいない。2017/10/18
ぶんこ
53
東京を震源地とした大地震で、お台場や東京湾岸沿いの埋立地が壊滅的な被害を受けてから4年。廃墟となって荒廃する街と人々。国籍を持たないストレートチルドレン。その子たちをくいものにする大人。諸悪の根源ともいうべき政治家。苦手な小説ですが、丈太君9歳の行く末が気になって最後まで読んでしまいました。同じ年頃の一人っ子俊君を亡くした元警察官巽丑寅が、丈太君を護るために奮闘。巽の元上司のみどりも、4年前に助けなかった子どもたちへの自責の念から奮闘します。巽の最期は、先に逝った息子の元へと続く道だったと思う。2021/07/26
ぜんこう
30
伊与原さんのデビュー作(と解説で知る)。近未来の直下地震後の東京が舞台(本書は東日本大震災の前に書かれてます)。伊与原さんにしては理系うんちくがほとんど無し。登場する”ロマン派”の地震学者くらい。元刑事のアウトローおやじが主人公の映像化しても面白いかもしれないくらい。個人的には理系や科学多めが好きですが、これはこれで面白かったです。2021/09/11
一笑
23
伊与原さんの横溝正史ミステリ大賞受賞作。前に読んだ「月まで3キロ」「八月の銀の月」とは全く趣が違う。第二次世界恐慌の後、お台場地下を震源地とした大地震にみまわれた東京が舞台の近未来小説。国とは何か、国籍とは何か、人間はどう生きるべきか、大杉栄なんかも登場して話は結構重かった。『人間というのはなあ、みんな鎖引きずって歩いとるんじゃ! 断ち切られへん鎖も、断ち切りたい鎖も、断ち切ったらあかん鎖も、ようけ引きずって歩いとるんじゃ!』主人公巽の言葉が心に残る。力を入れて書いたということがよくわかる作品だった。2024/05/04
くみこ
23
経済の破綻と大震災で、治安も秩序も乱れた近未来の東京が舞台。元刑事の巽と、孤児の丈太との出会いから始まります。ヤクザに狙われる丈太と、厳重に立ち入りが禁止されたお台場が繋がり始めると、ストーリーは一気に動きます。巽の元上司みどりと公安の能見、コロニーの長と周辺の人々、オタクの教授などの登場人物が、殺伐としたストーリーの救いになっています。訳あって孤独を抱える巽とみどりの関係性も良かった。それにしても、世界を腐らせる連中は、近未来でも変わり映えしないようで…。読み応えある伊予原さんのデビュー作でした。2023/02/28