内容説明
日本人は、はじめて差別に憤り、平等を希求した。本書は、忌まわしい日本ファシズムへとつながった〈昭和維新〉思想の起源を、明治の国家主義が帝国主義へと転じた時代の不安と疎外感のなかに見出す。いまや忘れられた渥美勝をはじめとして、高山樗牛、石川啄木、北一輝らの系譜をたどり、悲哀にみちた「維新者」の肖像を描く、著者、最後の書。(講談社学術文庫)
目次
渥美勝のこと
渥美の遺稿「阿呆吉」
「桃太郎主義」の意味
長谷川如是閑の観察
青年層の心理的転位
樗牛と啄木
明治青年の疎外感
戊申詔書
地方改良運動
田沢義鋪のこと
平沼騏一郎と日本社
日本的儒教の流れ
初亥詔書
北一輝の天皇論
国家社会主義の諸形態
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
59
昭和維新というと戦前に軍部が中心になって行った運動というイメージであるが、本書はそれを明治から続くある流れが噴出したものとして捉えようとしているように思える。冒頭渥美勝や朝日平吾という聞きなれない名前の人物の活動が紹介されるが、何となく彼らの主張を聞くと、現在の社会運動が反転しているような感覚を覚える。その後明治期における青年の断層、地方改良運動等が紹介されているが、一見繋がりを持たぬこれらがその背後に伏流水のように流れているものが明らかにされる。著者の死で途絶したが是非とも最後まで読んでみたかった。2021/02/22
nbhd
19
事実、読みはじめたら200ページほど全然止まれなかった。感情移入した。これは凄い本。今年は数学に親鸞と、衝撃を受ける本の連続なのだけど、それでもこれは年間トップクラスに入る1冊だと思う。テーマはずばり「実存」。2.26事件に代表される昭和維新の思想の淵源はどこにあるのか?著者はその在り処を明治後期の社会変動にともなう不安や疎外感に求め、「実存の肖像」を丹念に描いていく。不思議なことに、70年代に書かれた論考であるのに、ここで描かれる戦前の空気は21世紀現在の空気にどうしようもなくオーバーラップしてくる。2016/10/16
かんがく
12
未完に終わった試論だが、1910年(第二維新)、20年(大正維新)、30年(昭和維新)前後をそれぞれ官僚と民間右翼による革新運動(維新)の側面から捉え直す視点はとても面白い。2020/10/29
keint
9
昭和維新の思想の水脈を明治からさかのぼって様々な思想家を取り上げて解説している。 最初は昭和維新とは程遠い思想家たち出てきてがどう関係するのかがわからなかったが、最終的には二・二六事件につながっており、ハッとさせられた。2019/09/24
クサバナリスト
5
NHK の正月特番『100分deナショナリズム』の課題図書のひとつ。番組では渥美勝と朝日平吾のみ取り上げられていた。昭和の日本一ファシズムへと繋がるその思想の持ち主たちの肖像を探った作品。2020/01/24
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