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内容説明
仙人になって不老長生を得たいという願い。世俗を離れ思うがままに暮らしたいという隠逸への憧れ。古代の理想郷=華胥氏の国――。中国最古の詩集『詩経』にあらわれた「楽土」から陶淵明の「桃花源記」まで、中国の精神文化を考えるうえで欠かせない「楽園」の思想を読み解く。
目次
第1章 仙界の夢想(不老長生の希求 仙界への疑念 魏晋哲人の神仙観)
第2章 隠逸の願望(隠逸とは何か 高潔から愉楽へ 自分らしく生きる)
第3章 古代の楽園(楽土 鼓腹撃壌―古代の泰平の世 華胥氏の国)
第4章 地上の楽園(庭園 隠れ里)
第5章 桃花源(陶淵明の「桃花源記」 それぞれの桃花源)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
70
面白し。中国の楽園思想を仙境や隠逸、古代の楽園とテーマ別に分けて解説しているのだが、一つ一つのテーマがとても興味深い。例えば曹操、曹丕、曹植の仙境観や隠逸の観念が政治への異議申し立てから自分として生きる愉楽へとの変化。そして中国の楽園文学として最も有名であろう『桃花源記』とそれの各時代の受け取られ方等、楽園というものに少しでも興味のある人間ならどこを開いても楽しめる事請け合い。それらを通じて楽園思想の他国との共通性や中国独特の発展、こういうものを通じて中国独自の思惟に触れる事が出来そうな一冊でした。2021/08/14
てれまこし
15
中国の楽園といえば桃源郷(中国語では桃花源)が有名だが、意外なことに陶淵明が唯一の典拠で他に類例がない。中国ではそれよりも不老不死の仙人の方に願望が向かった。より現実的な選択肢として隠逸があった。政治に倦んだ文人官僚が一族郎党を引き連れて山に入る。あるいは庭園という形で楽園を部分的に現実化しようとする。ユートピアへの志向が強くないのはやはり儒教の影響らしいが、『詩経』には「楽土」という語が見える。文人とは異なる民衆的な理想郷はこの「楽土」の方にあるかもと示唆されているが、どんな場所かの記述はないそうだ。2023/02/23
GEO(ジオ)
6
陶淵明以来、中国人たちが思い描き続けた楽園論。時代が変わればユートピアも変わる。2013/10/05
遊未
4
仙界、隠逸、華胥氏の国、ユートピア。中国の楽園は時代や儒教やらにより変遷します。曹操、曹丕、曹植が仙界の存在を否定しているのが「らしい」と感じました。それにしても「桃花源」はこの文字を目にするだけでアロマテラピーやヒーリング効果まで備えて安らぎをもたらします。でも、毎日しっかり労働する世界です。労働も人の安らかさのうちにあるということでしょうか。2016/03/14
R
4
古代の詩人や官僚が思い描いた幻想の都「桃源郷・桃花源」について書かれた本でした。非常に丁寧な漢文訳で読みやすく、漢の頃や、三国時代、西晋、唐、北宋といった文化的にも華やいだ時分などにも夢みられた桃源郷について、その成り立ち、時代背景を交えた語り口で解説していてわかりやすく、そして面白い本でした。辛すぎる現実からの逃避として、まさに夢を盛り込んだ世界である桃源郷は、なんとなく親近感というか、良さそうなところだなと思わされ、東洋人的な理想の世界の一つなのかもしれないと考えさせられました。2014/01/16