内容説明
群雄が割拠していた、日入国――百葉(ひゃくよう)時代。天下布武を目前にした神藤(しんどう)家は最後の合戦に挑む直前、常闇と呼ばれる怪異に取り込まれた。それから数十年。世間は偽りの安寧を享受しつつも、常闇の正体は明らかににされないままだった。神藤家の遺臣、峰邑(みねむら)家に身を寄せる白堂闇佐(はくどうやみざ)は、常闇の謎の解明に動く。気鋭のミステリ作家、詠坂雄二が描く、新伝奇英雄譚!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
78
戦国時代をモデルにした架空の国の架空の歴史に、"常闇"という異界を配置した伝奇小説。日入国の百葉時代、天下統一目前だった大名と其の軍勢が国の中心に突如現れた巨大な暗黒空間に飲み込まれることから始まった常闇時代。尋常の人間は気が触れ歩骸(ゾンビ)となる妖魔が蠢く闇で戦った個性豊かな英雄豪傑を生き生きと描き出す。架空の戦史でありながら、史家による批評や研究にまで言及され、極めつけに(設定上の作者及び翻訳者による)後書きまで収録されており、パラレルワールドの本がこちらの世界に迷い込んできたと錯覚しそうだ。怪作。2019/12/18
Bugsy Malone
77
突如戦乱の世に現れた異界「常闇」、史書に記録は存在するものの、その出現も消失も、理さえも謎とされる怪異。架空の国、日入国(ひのいるくに)を構築し、その一部を侵食した「常闇」を通し、歴史と歴史に於ける武士、ひいては日本民族特有の死の物語を突き詰めて行く。「常闇」とは欲であり性であり業でもあるのか。物語は5編、しかしそれだけでは終わらない。やはり詠坂さんは面白い。2019/03/31
雪紫
32
海外の歴史小説の父が描く日入国に存在した常闇という名の異界との戦を描く歴史小説の邦訳を再刊行ーーという体裁の伝奇小説。作者を知る人にとってはあえてそうした読みにくい文体(理由までいけしゃあしゃあと)もあり、相変わらずな凝り性とひねくれ度、最後の一文のあれな感じは変わらず。歴史の中に封じられたファンタジーと英雄譚、後に残されたものに想いを馳せざるを得ないけどーーとりあえず真の意味でこの本を楽しむには辛子蓮根を用意しながらじゃないといけないのだろうか? ある意味本編をぶっ飛ばしそうなあとがきが2つもあるし。2020/04/23
そうたそ
13
★☆☆☆☆ この短い作品でよくもここまでの世界観を作り上げたものだ、と感心はしたのだけれど、面白いかどうかといえば、もはや物語としてすら脳内に入ってくることはなかった。まるで異世界の歴史書を読まされているような気になる文章。よく言えば徹底して作り上げられている世界観、悪く言えば中二病。そんな印象のする内容だった。詠坂さんといえばひねくれているミステリでおなじみであるが、これはまた別の意味でひねくれている内容。この挑戦的な感じはいつもすごいと思うんだけれど、いまいち心に響いてこないんだよなあ……。2014/02/20
alafish
7
すべてが架空であるにも関わらずノンフィクション風の偽史伝奇小説。日入国に突如現れた生と死が混沌とする"常闇"という設定をベースに連なる4つの短編の小説部分はどれも面白い歴史/伝奇物。それ以外の部分はいつもの作者、といった感じ。物語の内と外が曖昧になる独特の作風は魅力でもあり、取っ付きづらさでもある。自分は大好物だが。2013/12/06




