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内容説明
成長戦略だけでは“破綻”は回避できない。GDPの2倍、1000兆円を超えた日本の借金。成長戦略による国家破綻回避論は絶えないが、1990年代の財政悪化から20年余、好況時にも財政赤字は拡大した。経済成長による税収拡大はわずかに過ぎない。幾度となく財政再建が試みながらも、なぜ日本は失敗し続けるのか。本書は、特に予算制度に着目し、財政再建に成功・失敗した先進10ヵ国の事例を繙き、その根源的問題を指摘、日本の財政再建の道筋を提示する。
目次
第1章 財政悪化の軌跡―危機を深めた二〇年
第2章 財政赤字の政治経済学―問題は政治家か制度か
第3章 先進国の財政再建―失敗した国、成功した国
第4章 日本財政が抱える病理―財政規律と予算制度
第5章 予算と政治―ガバナンスの強化
終章 日本財政の展望―三つの課題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
49
ちょっと間が空きましたが、マイブームとしての財政。OECD諸国と比較して、日本の財政の透明性が最低であることを指摘する「衝撃的な」表から、予算制度の矛盾を指摘する構成は納得性の高いものですが、それでも読んでいて些か退屈なのは、「借金を減らすには金を使わない」というのが通奏低音になっているからでしょうか。この人も財務省出身ですしね。もっともアクチュアルなのは、公務員制度改革に触れた部分で、昨今の検事長の問題や安倍政権の悪いところを予言(本書は13年の本)しているように思います。2020/06/11
ヤギ郎
11
著者は元財務官僚。日本の財政赤字が拡大している現状を論じた上で、政治家と官僚の両側面から財政悪化の原因を分析する。ファイナンスにおける数値の処理に着目するのではなく、意思決定のプロセスに目を向けているところが本書の特色だろう。お財布を握っている人がお金の管理を自由にできないことが問題なのだろう。予算を組むときに、用途の審査や評価に本腰いれていないことも指摘できるだろう。今日では、企業が丁寧に財務評価をしているのだから、国も同じことをすればいいのではないだろうか。先進国の財政制度の国際比較も興味深い。2020/10/08
たらお
11
財政再建を進めるためには、政治家、官僚、国民が現在の財政のいびつさに対する危機感を共有しなければならないことがよくわかる。国債を日本人が賄っていることから、外部要因としての危機感がなく、借金の歯止めが効いていない。日本の財政再建が一向に進まない原因について、この本では言及し、先進国の再建の例を挙げる。景気・増税に頼るだけでなく、支出削減(社会保障費移転や公務員人件費)に頼った財政再建のほうが、成功する例が多いとのこと。時限爆弾のような財政破たんに翻弄されないように政治や予算編成のありかたに関心をもつべき。2014/12/05
とある本棚
7
結構面白かった。日本で財政再建が進まない理由を行政学や政治経済学の理論を用いつつ、多国間比較を通じて明らかにする。財政再建を進めるためにはまず政治のコミットメントを前提とし、中期財政フレームを導入したり、独立財政機関を設置したりする必要があると説く。個人的に面白かった箇所は、予算を精査する主計官も自分の分野が小さくなることには抵抗感があり、その結果相手の役人を押し切ってまで予算カットしようとする意識はない、とする描写。2022/06/13
yashiti76
7
4⃣日本が財政再建できない理由は、官僚の専門性の欠如。また、その元凶は公務員の政治化!歳入見通しもなしに歳出を議論する点や補正予算の多用、与党・官僚内閣制の問題、海外との比較など、わかりにくいものをわかりやすくまとめてある!2014/01/09