内容説明
両親の許をはなれて、血のつながらない祖母と送った伊豆湯ケ島での幼年時代――茫漠とした薄明の過去のなかから鮮やかに浮び上がるなつかしい思い出の数々を愛惜の念をこめて綴った「幼き日のこと」。ほかに、沼津から金沢・京都と移り住んだ学生時代を“文学放浪”の視点から描いた「青春放浪」、影響を受けた人物・書物・風土などを自由な感懐を交えつつ回顧した「私の自己形成史」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
85
自らの来し方や自己形成を冷静に見つめて綴ったエッセイ集。薄明の記憶の中から浮かび上がる一枚一枚の絵に深みと広がりを持たせていく回顧的かつ分析的な筆致には、絶えず自己と相手の心情や背景を汲み取ろうとする著者の眼差しが伺われる。幼き日を共に過ごした曽祖父の妾との関係を「同盟関係」「遠い昔の愛人」と表現するくだりは彼の慧眼やユーモアが感じられたり、父親を「ただ一人の理解者」と言及するくだりでは「一種言い難い哀愁」が直に伝わってくる。「他と替えることのできぬ」風土、人物、書物などへの感懐と愛惜の念が織りなす三編。2021/02/05
けぴ
41
含蓄のある一節。P262 「へんな言い方であるが、私が父親から貰った一番大きいものは、父親の持っているものを受け継いだことではなく、父親に反撥することによって、自分を父親とは少し違ったものに造りあげようとしてきたその過程であるといっていい」 しろばんば、夏草冬濤、北の海の三部作の素材を存分に語ったエッセイは読み応えたっぷりでした。2024/02/29
Syo
22
井上靖に興味が2022/10/26
i-miya
14
小学校の修学旅行 一泊、拾ったしゃもじ<ふろ>岸田劉生「初期肉筆浮世絵」<まつり>西トルキスタン、ウズベク共和国、修善寺の弘法さんのまつり、色のついたニッキ水の壜、谷崎潤一郎『母を恋うる記』沼津中学3年生、国語の時間、馬飛ばし=競馬、三島神社の祭礼の花火、柳田国男『山の人生』私の郷里には浄蓮の滝という多少名の知れた滝がある、下田街道、鳥取県日野郡福栄町、天城山中 山火事<正月><ちちはは>小学校6年、おかのおばあさん死亡、父の軍服姿《青春放浪》2006/12/09
ニコン
14
「しろばんば」ほかを読んでいたので、その風景がよみがえってきます。いい本です。「あすなろ物語」はまだ読んでいないので、読みますっ。2013/07/22
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