内容説明
高級マンションに同居する、奏絵とまひる。姉妹でも友達でもない二人の共通点は、同じ男性の愛人であることだった。割り切って始めた共同生活で二人分の食事を淡々と作り続けるうち、奏絵の心境は変化していく――。若い女性から圧倒的な支持を集める恋愛小説の新旗手が「食べること」を通して、叶わない恋と女子の成長を描いた長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
65
静かな小説なのに苦しみがあります。平井という同じ男性の愛人である奏絵とまひる。2人は高級マンションに同居していますが、恋敵でありながら何処か割り切っているところがあるようです。歪んでいる日常とあり得ない生活ですが、優しくて甘さが漂っているのが不思議です。でも苦しみを感じるのは恋敵の距離が縮まる中で均衡を失っていくまひると痛い程受け止めようとする奏絵の関係があるからでしょう。感情が少なく、低い温度だからこそ不安定で、無意識に傷ついているような気がしました。決して消えない傷として2人は永遠なのですね。2015/03/15
なゆ
55
同じ部屋に住む奏絵とまひるは、ふたりとも平井さんという既婚男性の愛人。友人同士のように暮らしながら平井さんが通ってくるのを待つという、ありえないような日々。なのに不思議とドロドロしたところがない、静かな話。この生活を冷静すぎる目で見つめる奏絵の、平井さんに対する気持ちがイマイチよく見えないな。むしろまひるの反応や心情が正しい愛人らしさか。こんな生活、そんなに続くワケないとは思っていたが、ラストはちょっと小気味いいようで、それでうまくいく?という疑問も。それはそうと、平井さんってそんなにも魅力的なの?2016/06/05
果実
43
久しぶりの遅読はこの本になりました。「同性愛的」だという噂とタイトル、装丁より。 愛人同士の暮らしなのに全くドロドロしていない。淡々と静かに、でも確実に過ぎていく日々と、確かに同性愛的な耽美な箇所に強く惹かれました。ゆっくり読むのにもぴったりでした。戻してくれて、ありがとう。2014/09/04
じょんじょん
42
読友さんのぼろくそレビューが面白くて、逆に興味を惹かれました。設定が女性には、より抵抗があると思います。でも読み始めると設定から想像される非倫理感は薄く不思議な透明感と不安感に包まれました。西加奈子さんが解説で書かれていますが、主人公の「徹底した諦観」よるものなのですね。幼いときの母との関係での期待され捨てられた感が主人公を支配し、それが「拾われた」環境で自己を感じられない中で危うい関係性が保たれていたと思います。ラストの発言は「命をかけて選んだ言葉」だし「誰にもおかされない強さ」だと自分も感じました。 2019/05/24
♡手乗りタイガー♡
39
面倒になって淡々とおわらせよっか、あたしが奏絵ならまずそう思うけど「拾われた」意識でこそあそこでまふゆと同棲生活送れたんやろうね。加藤さんの描く話の主人公だいたい冷めてて恋愛でも冷静な目で相手を見るって所が惹かれるポイントかな!そして共感できるってゆー。そこでかなりの温度差のまふゆと出会って、まふゆがマジで救われたと思う、ラストシーンで「一緒に行こう」はガチで女前!めずらしく2人にダブルで感情移入してしまったな、あたしもあの状況なら奏絵側やけど、まふゆ側に引っ張られることも可能性的にないではないもんな~。2014/02/04