内容説明
2013年1月に逝去した文豪が晩年に振り返った、類稀な友人たちとの人生の時間。吉行淳之介の恋愛中の態度に驚き、遠藤周作にキリスト教受洗の代父を頼み、島尾敏雄の戦後の苦闘に思いを馳せ、小林秀雄に文士の心得を訊く。かくも豊かな友情がありえた時代の香りと響きを伝える名品集。「悪い仲間」で出発した安岡文学の芳醇なる帰着。
目次
1(吉行淳之介の事 青空を仰いで浮かぶ想い 豆と寒天の面白さ ほか)
2(弔辞 遠藤周作 縁について 遠藤周作との交友半世紀 ほか)
3(対談 人間と文学(安岡章太郎 小林秀雄)
座談会 島尾敏雄「聖者」となるまで(安岡章太郎 小川国夫 吉行淳之介)
座談会 僕たちの信仰(安岡章太郎 井上洋治 遠藤周作))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もりくに
50
私が「文学」していた頃は、「第一次戦後は」と「第三の新人」の時代だった。(どういうわけか、大岡昇平などの「第二次戦後派」は影が薄い。)両者の違いの多くは、「戦争」経験の有無によるだろう。「第三の新人」では、本書の安岡章太郎、吉行淳之介、遠藤周作が中心だろう。三人の内、吉行は「性」というテーマから敬遠、遠藤は「沈黙」などは読んだが、その宗教性(信仰)についていけなかった。従って、安岡の作品に一番親しみ、「流離譚」にも驚いた。本書で島尾敏雄の吉行達との深い付き合いを知った。私は吉本隆明経由で知ったので意外。→2020/11/23
Ayumi Katayama
23
昔、吉行淳之介や遠藤周作が好きでよく読んだ。彼らのエッセイではたくさんのご友人が遡上にのせられたものだ。阿川弘之、北杜夫、近藤啓太郎、三浦朱門。安岡章太郎もその一人だった。本書の背表紙に安岡章太郎、吉行淳之介とあると懐かしさが込み上げてくる。パラとめくるとこんな文章が目についた。洗礼をのときに動機を問われたらなんと答えるべきかと遠藤周作に問うた。その答えは「いまさら何を苦にしてそんなことをいう、受洗動機なんて『空が余りに青いから』とでも言っておけばいいんだ」。思わずクスッと笑う。遠藤周作さんらしい。2021/02/07
DEE
12
本に入っていないエッセイや寄稿文、対談などを集めたもの。 遠藤周作、吉行淳之介との思い出を語る文章の中に、親しい友人たちが次々に亡くなっていく寂しさを感じる。2021/12/29
michel
12
★3.0。「第三の新人」と呼ばれた安岡章太郎著。前半部は、島尾敏雄、遠藤周作、吉行淳之介といった文士たちの交友を記す。私は前半部よりも後半部の、小林秀雄との対談が興味深かった。2021/11/28
桜もち 太郎
7
吉行淳之介、遠藤周作らとの繋がり。なぜこれほどまでに心の繋がりが深いのでしょうか。戦中戦後を互いに過ごしたからだろうか。そんな人たちも皆亡くなってしまいました。残っている人は三浦朱門、阿川弘之くらいでしょうか。吉行淳之介が亡くなった時の遠藤との会話が胸を打ちました。「弔辞 遠藤周作」も悲しみを深めました。2015/08/02
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