内容説明
市場での日常品から朝廷の官位にいたるまで、中世人の購買行動から、当時の価値観や道徳意識、信仰心のありかたに迫る。政情不安な時代の生々しい実情と、人々の心性を浮かび上がらせる、新しい日本史。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
第1章 市場へむかう道
第2章 中世人の経済感覚とは
第3章 中世人の秩序意識
第4章 官位をどう買うか
第5章 武士たちの秩序意識
第6章 御家人成功の手続き
第7章 寺社と金融
第8章 官位の値うち
第9章 大福長者と兼好法師
第10章 ある地方土豪の勧進と作善
第11章 説経師の肖像
第12章 浄土の演出
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
35
史料を読み解くことの重要性、中世の人びとのしたたかさを私たちに知らしめてくれる一冊。歯ごたえのある内容だった。2014/12/12
feodor
8
中世史の本。市場などでの買い物を、説話集などから描き出しつつ、そこから「売官」とも見える成功(じょうごう)のシステムへと転じていき、幕府と朝廷とのシステムの変遷を上手にわかりやすく描いた作品。 紙背文書による研究の成果などを、小難しくなく紹介しているところでよいな、と感じられた。そして、説話だとか一遍聖絵などから描かれる中世の市場の様子などの描写も素晴らしかった。2013/08/06
珈琲好き
5
成功(じょうこう)のノウハウと中世人の色々な説話に触れられてる。著者の別作品と被ってるネタもあったがまあ文庫だしいいかな。 / お坊さんが借金取りをするのは仏罰で脅せるからというのは説得力があった。中世の行政執行が不備な社会で金貸しやるのは大変だよね。2018/02/12
kawasaki
4
中世の人々の、モノや地位や精神的宗教的なにかしらを売り買いする行為を通して社会を見る。扱われるのは主に「成功」システムや、中世の社会・経済における寺社の役割。ほかに、形式化とともに洗練された宮廷行事、地方豪族のお金の使い方、市場で餅を買う話ことの意義づけ、などなど多岐にわたり興味深い。語り口は柔らかく、時々ふふふと笑いつつ読む。急に深い専門的な用語が並ぶ部分があって、その辺はちょっと緩衝地帯があってもいいかなと。2019/05/18
shou
4
物々交換からアマゾンまで・・・ではなくて、中世の売官制度と信仰に関連する金融業が中心だった。史料から読み解いていく内容は面白いのに、タイトルが不適切で読み手としては肩透かしの感。2015/02/02