文春文庫<br> ナガサキ消えたもう一つの「原爆ドーム」

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文春文庫
ナガサキ消えたもう一つの「原爆ドーム」

  • 著者名:高瀬毅
  • 価格 ¥712(本体¥648)
  • 文藝春秋(2013/08発売)
  • ポイント 6pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167838683
  • NDC分類:916

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内容説明

長崎にも「原爆ドーム」があった――。それは爆心地の北東500メートルほどの位置に立つ、高さ25メートルの鐘楼を持った浦上天主堂。しかし1925年に完成し、東洋一と謳われたこの天主堂は原爆によって廃墟と化す。当初、被爆遺構として保存に積極的だったはずの長崎市長だが、訪米を経て「原爆の悲惨を物語る資料としては適切にあらず」と発言し、撤去路線に転換。結果として旧浦上天主堂は1958年に撤去されるに至る。世界遺産クラスの被爆遺構はなぜ失われたのか? 市長の翻心の裏には何があったのか? 丹念な取材によって昭和史のミステリーを解き明かした渾身のノンフィクション。

目次

第1章 昔、そこに天主堂の廃墟があった
第2章 弾圧を耐え抜いた浦上の丘
第3章 原爆投下―浦上への道
第4章 浦上の聖者と米国の影
第5章 仕組まれた提携
第6章 二十世紀の十字架
第7章 傷跡は消し去れ
第8章 アメリカ
第9章 USIA
第10章 天主堂廃墟を取り払いしものは

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

340
ナガサキはいうまでもなく、ヒロシマと並ぶ被爆地である。そして、ヒロシマには原爆ドームといった被爆都市を象徴する遺構が残されているが、ナガサキにはそれがない。少なくとも現存しない。ヒロシマの産業奨励館は、ほぼ爆心地の直下に位置し、現在は原爆ドームとして(負の)世界遺産となっているが、ナガサキの爆心地近くには浦上天主堂があった。現在残された写真を見ると、それもまた(というよりは、こちらの方が)世界遺産にふさわしいとさえ言えそうだ。しかも、カトリックの聖堂であるだけに一層インパクトが強そうである。⇒2017/07/03

あやの

46
そう言えば広島に比べ、長崎は被爆地としてあまり出てこないと思っていた。この本を読み、アメリカの思惑とキリスト教的思想が絡みあい、被爆地としての主張が封印(?)されていったことがわかった。戦争の遺構を残すことの意義は深い。未来の、その都市の在り方までを決定する要因ともなっていく。東日本大震災前に書かれたものだが、遺構の意味や後世への伝え方など、大切なことをたくさん学べる本ではないか。若干読みにくい部分はあるが、日本人としてものすごく大切なことを掘り起こしている本だと思う。2017/10/01

Nobuko Hashimoto

44
大変興味深かった。長崎には中高の修学旅行で2回も行ったが印象が薄い。年齢や経た時間のせいもあるだろうが、広島の原爆ドームのようなシンボルとなる遺構がないこともあるのだろう。本書では、爆心地が浦上というキリスト教徒の拠点だったこと、地形の関係で街の中心地の被害が浦上より相対的に低かったこと、冷戦下、核開発に邁進するアメリカの意向が影響し、浦上天主堂という象徴的な被爆建物を取り壊すに至ったことを資料や証言から読み解いていく。取り壊し前の記録写真もあり。文春文庫版は東日本大震災を受けた力強い追記あり、おすすめ。2020/01/02

hatayan

43
長崎の被曝の象徴的なモニュメントたりえた浦上天主堂はなぜ戦後10年余りで取り壊されたのか。当初保存に前向きだった市長が掌を返したように解体に舵を切ったのはなぜだったのか。 著者は市長の1ヶ月のアメリカ外遊と東西冷戦の時期が重なる点に着目。原爆の記憶を呼び起こす遺構が原爆を正当化したい米国には目障りだったこと、反共の防波堤として日本を懐柔しようとする米国の国家の意思が市長の変節に色濃く反映されていたのではと状況証拠から推測します。 被爆地である長崎が国際政治の枠組で翻弄されていたことを丹念に記す一冊です。2019/08/27

TATA

42
コロナ前のオランダ出張の際に「今年は被爆75年だよね」と現地の方に言われた。指折り数えて確かにそうだと返したが、海外の方のほうが意識が高いことに少し考えさせられた。そんなこともあって本作を手に取る。広島では産業奨励館が世界遺産となったが、長崎には象徴的な被爆遺構はない。浦上天主堂が戦後解体されたことをめぐるドキュメンタリー。日本の国民感情に対する米国の懐柔策との見方もあるが真実は分からない。ただこういった見方もあったことを知っておくべき。間もなく終戦75年。また様々なことを考える季節が来ます。2020/07/26

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