内容説明
主従身分は当座のこと。もののふなれば、己れの主を己れのみと定めるべし。時は関ヶ原の大乱直後。藤堂高虎家中にあっても媚びずなびかず、「恥知らず」と罵られても、名を上げることに命を燃やした渡辺勘兵衛。乱世を生きる意地と矜持、反骨と覚悟を交錯させ、「真のもののふ」と仰がれた生涯を鮮烈に描く大注目の武将物語!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
maito/まいと
20
混迷と実力の時代から安定と組織の時代へ・・・かつては同じ姿勢で世を渡り歩いた藤堂高虎と渡辺勘兵衛。しかし時代が変わるにつれ、領地と家臣を守るため組織の人間に変わった高虎と、あくまで実力本位を貫く勘兵衛との間には、いつしか大きな溝が・・・。タイトルから連想しづらい勘兵衛の爽やかさが魅力の一冊(笑)組織論が雰囲気を作る中での勘兵衛の姿勢に、多くの人々が惹かれていくのが、すごくわかる。この本ではかっこわるい高虎だけど、高虎側の作品だと、また違った見え方になるので、この本読んだ方は是非高虎関連の本を読んで欲しい!2013/10/08
onasu
17
関ヶ原の戦いが終わってもなお大和郡山城にこもる西軍方がいた。豊家の五奉行、増田長盛から兵の采配を任されていた渡辺勘兵衛。奉行衆が抱えていた強者は島左近だけにあらず。 寄せ手は、本多正純に、藤堂高虎。敵ながら、その両者から惚れられた勘兵衛は、戦後高禄での誘いも多々あり、その中でも藤堂家に仕えたが、それがけちの附け始め。 高く買っていた高虎だったが、もはや徳川家に換わる者はなし、となると変わらない勘兵衛が憎らしくなり、召し放ちの後も奉公構えとして、長きの愛憎関係に。 また新たな人物が掘り当てられました。2019/01/23
スー
14
主人公は渡辺勘兵衛で関ヶ原の戦い後、藤堂高虎に仕えてから亡くなるまでです。当初は勘兵衛は同じ渡り奉公をしていた高虎に期待していましたが、だんだんと保身に走る男に成り下がってしまう。中盤からは藤堂高虎が花の慶次の前田利家にしか見えなくなってしまい、渡辺勘兵衛も自分の生き方を貫き爽やかな人物に書かれていたのですが前田慶次に比べると少し劣るように感じてしまいましたが、それでも渡辺勘兵衛や増田長政の息子増田兵部など戦場に命をかけた武士達の生きざまを堪能しました。人生意気に感ずこんな生き方に憧れました。2018/03/01
はっとり
7
中路さんの本は初めて読みました。渡辺勘兵衛とういう武将は名前も知らず、読むにつけ魅力的な人柄で、無骨であり己の信念で生き続けた人なのだと思いました。いい物語であり、いい本です2016/08/16
mushoku2006
5
渋い、実に渋い。 著者はこういう今まであまり知られていなかった武将の、 知られざる姿を描き出すのが実に巧み。 しかし、 主人公の渡り奉公という生き様のかっこよさに感服するよりも、 藤堂高虎のような武将が、 出世し、世の中が落ち着くにつれて、 ある意味仕方が無いとはいえ、 処世術に長けただけの凡庸な人物になっていくところが哀しいという気持ちの方が大きい。2013/08/02