内容説明
私は体調の悪いときに美しいものを見る贅沢をしたくなる。
しかし最近は馴染みの丸善に行くのも気が重い。
ある日檸檬を買った私は、その香りや色に刺激され、丸善の棚に檸檬一つを置いてくる。
現実に傷つき病魔と闘いながら、繊細な感受性を表した表題作ほか、「城のある町にて」「雪後」などを収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
だんぼ
370
そして私はその中に現実の私自身を見失うのを楽しんだ 2024/02/16
ソルティ
315
文ストでの檸檬爆弾がどんなものかと読んでみた。「檸檬」正直、そんなこと?!という感じ。「桜の樹の下には」が良い。昔パタリロにもそんな話あったしタイトル近い小説ありますよね。全体的に暗い。長く病気しているとこんな風に思考が細かい所まで及んで暗く退廃的になってくるのかも。でも感性は鋭いと思う。そういう人の文章は人に響いたり共感できたりするのかも。「丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾をしかけてきた奇妙な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。」2022/10/19
pomm.
162
あまりにもよく晴れた雲ひとつない朝だから死ぬのによい日だと誰かが言った。あんなにも透明な薄紅の花弁となって散れるなら私だって花の下にて春死なむ。屍体のうえにしきつめてね隙間なく。水色の空に溶けましょう花びら。闇夜を照らすひとひらの花弁。酒宴をひらけないならば青空のもとひとり白ワイン傾けてグラスに春を持ち帰りたい。もうすこしだけ散らないでさくら2020/04/04
青乃108号
135
大変な努力をしてかなりの時間をかけて、なんとか読み終えた。全く頭に入って来てはいないのに読んでいると何だか自分の頭が良くなってくる気がするから不思議。一話読み終えて、あれ、どんな話だったっけとパラパラ見返してみるとそこに並んでいる文字列に全く見覚えがない。「檸檬」だけは少し形を変えて本書に2編、収められているので何とか記憶に残っているのですけれども。 後、瀬山の話。瀬山君がこれまた学生時代の俺にそっくりでびっくり。まあ、とにかく読み終えた。それだけで十分、満足である。 2021/08/25
mukimi
129
仕事前に突然思い立ち30分で一気に読んだ。学生時代つっかえながら読んだ記憶があるけど、アラフォーになり、社会の理不尽さも灰色の景色も人間のグレーさもまとわりつく疲労も不調も知る様になって、この作品に描かれる檸檬の色彩の鮮やかさをより強く感じられるようになった。歳を重ねるのも悪くないな。病を抱え重い体を引きずり歩く生きづらい灰色の世界を切り裂く檸檬爆弾。そんな自己満足のユーモアが、誰かの視線を想像する自己表現が、結局孤独な人間の救済になるのではないだろうか。梶井基次郎は世界に檸檬という一点の希望を残した。2026/06/11




