内容説明
自己出版され話題をさらった電子書籍が、分量1.8倍以上、文体・構成も一新した完全改稿版として登場。
バーチャルリアリティ技術と遺伝子組換作物が浸透した近未来、謎の塩基配列を持つ稲に秘められた陰謀に迫る、本格SFサスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
330
2037年を舞台にした近未来SF。遺伝子組み換えはもはや過去の技術。インターネットもまたしかり。それぞれ、蒸留作物などなにもかもパラダイムシフト後の世界である。この技術革新についていける人、もしくはこれが想像の範疇に収まる人には面白いだろうと思う。ところが、私は置いていかれる側なので、本書はなかなかにたいへんである。本来はもっと目くるめくスピードなのだろうが、ホー・チ・ミンに基軸を置いたりすることによって、速度を制御し、理解を求めるところなどは読者との共生をはかる、この作家らしいところか。2024/12/07
absinthe
171
面白い。常に先が気になるよう工夫があるし現代テクノロジーの問題点も絡めている。そしてテクノロジーを単純に否定しない姿勢がいい。合成DNAにデバッグビルドなどの概念が登場するのも面白い。遺伝子工学に現実のソフト開発の現場の様子を当てはめた感じが印象的だった。でも本書、オススメには躊躇する。小説としての体裁は上手とは言い難い。でもabsintheはとても気に入った。absintheが読んだのはオリジナルにかなりの改訂がされたものらしい。2016/12/02
nobby
122
うーむ、この拡張現実とかゲノムなど専門的に描かれた近未来な世界観は自分には難しかった…〈蒸留作物〉なる遺伝子操作された稲が〈汚染稲〉と化している危機。その解明に取り組む面々の現実の姿とアバターが入り混じる様子を楽しむべき中盤までは、正直どこまでついていけたか自信がない…それでも要因に行きついてから解決まで一気に読ませる白熱の後半にはただ圧倒される!その簡潔に楽しませる展開は並大抵のスパイアクションを上回る面白さ。あくまで個人的に求めるSFの舞台は、想像のつかない遥か遠い未来や宇宙であると確認した次第(笑)2019/11/01
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
115
藤井太洋さんのデビュー作。遺伝子を完全に設計された作物が突如異変を起こした。遺伝子設計者(Gene Mapper)である林田の元にきた原因調査の依頼。何が起こっているのか、なかなか明らかにならないところはややフラストレーションがあるのだが、自費出版から火が付いただけあって面白い。近未来の話ではあるが、これに近いことはほぼ可能な世界になっている。遺伝子操作をされ、「人間の役に立つ」ように改良された動植物。完全に管理下に置いたつもりでも、いつ人の手を離れて暴走するか。絶対に起こらないとは言い切れない。★★★★2016/11/19
紫綺
102
個人出版された電子書籍が好評で、書き下ろし書籍化された異色作。拡張現実、遺伝子デザイナー、蒸留作物…見慣れない言葉に戸惑いながらも、加速度的に頁を繰る手が速くなる。マトリックスとジェノサイドを足してマイルドにした感じ。ITにそこそこ通じる、SFの好きな人にオススメ♪2014/05/31