内容説明
城下町、小田原。介護施設の同僚だった朝子と正人、梓と卓也は恋人同士。けれど以前はお互いの相手と付き合っていた。新しい恋にとまどい、別れの傷跡に心疼かせ、過去の罪に苦しみながらも、少しずつ前を向いて歩き始める二組の恋人たちを季節の移ろいと共にみずみずしく描く。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
473
椰月美智子さん強化月間の一環。物語はありがちな狭い世界での四角関係なのだけれど、著者さん独特の繊細な描写が、全体をあたたかいものにしている。特に像のウメ子や、正人のちぃ兄への描写、さすがだわ。小田原というのははるか昔、箱根の帰りに寄ったことがあるだけだが、表題のとおり坂道の続く風景が立ち昇るようだった。2019/04/26
おしゃべりメガネ
152
‘しっとり’とした雰囲気の椰月さん作品です。介護施設で働く2人の男性と2人の女性、以前はお互いの相手とそれぞれが付き合っていた設定がなんとも興味深いです。4人それぞれの視点から描かれる連作集なので、飽きずに読み進めることができ、それぞれの人物がしっかりとキャラ形成されているので、感情移入しやすいです。個人的には障害を抱える兄を持つ「正人」としっかりした性格の「梓」目線の話が印象に残りました。「朝子」はミステリアスで「卓也」には少しイラっとしました。でも、さすがは椰月さんで読後は‘しっとり’できました。2014/08/31
takaC
71
小田原の土地鑑がそこそこあるのが作用してか総じて面白かったのだけど、アラサーの恋愛話を「若いな」と思ってしまう自分は相対的に年寄りなわけなのね。2015/06/23
papako
69
ミカママさんのレビューで。小田原で、介護関係の仕事をしている4人の恋や仕事のあれこれ。最初の朝子の章では、なんだ、めんどくさいヤツら。と思っていたのですが、それぞれの心の内を読んでいくと、だんだん彼らが息をして恋をして仕事をして、小田原に住んでいる気がしてきて、最後は心から彼らの幸せを祈っていました。朝子の正人の次の人、と言う気持ち、めっちゃ分かるわ。好きなのにね。畑野さんの『海の見える街』を読んだ時みたい。小田原は近くても通り過ぎる所なので、今度行ってみよう。うん、良かった。2019/06/21
おくちゃん🌸柳緑花紅
62
小田原を舞台に四角関係の恋人達。風物詩や季節の移ろいを背景に4人の視点から物語る。正人さん視点の貝の音」では涙を抑えきれなかった。この背景が今の彼を作っている事。人は皆それぞれの背景で今の自分になっているのだなぁ。初めての椰月さん作品☆好きです!小田原☆行きたい!2014/04/27