内容説明
美少女と中年男に弄ばれる甘美で残酷な青春。
1958年、東京郊外にある映画撮影所(著者が助監督として活動した松竹大船撮影所がモデル)から物語は始まる。主人公は大学を卒業したばかりの22歳の助監督。映画界は最盛期を過ぎたとはいえまだまだ活気に満ちている。新人女優として突然主人公の目の前に現れた16歳の美少女と大根役者の中年男をめぐってストーリーは展開する。ほとんどは、巨匠が監督する映画「一葉」の撮影現場である。当時の映画製作の現場が微細に生き生きと描写される(著者がこれほど詳細に映画製作の現場を描いたことはない)。最終の第12章のみ33年後という設定である。甘美な青春の日々とほのかなエロティシズム――、青春の苦さを見事に描いた傑作長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶうたん
5
著者が新潮社から純文学書き下ろしで刊行したもの。主人公は著者の投影か就職後に撮影所に通い始めた助監督。屈折した恋模様は青春小説的な味わいがなくも無いのだが、ラブストーリー的な展開はあまり無く、時代を彩る模様の一つにすぎない。そして数十年後を描く最後の章は老いや時間が溶かしていく記憶の不確かさが狙いなのだろうが、何が本当かわからなくなるところは軽い現実崩壊感覚とも言える不思議な味わいがなくも無い。全体的にはセピア色を感じる小説だった。2025/02/11
よし
5
題に惹かれて、読んでみた。主人公たちの人間関係、出来事は全くの不可解さに混乱させられる。大学でたばかりの助監督、石田。17歳の美少女 瑠美。そして、下手な中年役者 羽柴。とても現実とは思えないような、まるで映画撮影所のシーンの積み重ね。30年後のラスト章もまた、「迷宮」の深みにはまってしまう。・・なんとも、題のまま、「冬の蜃気楼」が全編を覆っている。2015/09/05
夏子
4
戦後すぐの映画業界に助監督として入ったばかりの若い男と彼を振り回すベテラン俳優の男と新人女優の物語。特に大きな事件もなく主人公の自意識過剰な部分だけが目に付くけれど33年後の再開の場面での不確かな記憶を元にしての会話がとても生々しくてこういう事はどこでも普通にあるのかもしれないなという気味の悪さが残った。2018/03/28
cof
3
この人の描くひとの多面性というか、善悪清濁ないまぜになってる感じがとても好きだ。この話の最終章のおどろきは、表現しづらい。びっくりするというのとは違う、置いていかれたような気分。私の歳でも、人と昔の記憶が食い違うことはある。もっと歳をとったなら尚更だろう。昔の記憶があやふやで、取り返せない不安と安堵。2014/06/29
コジターレ
1
読メ登録前に読了。
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