内容説明
太平洋戦争が始まる年、許嫁の父を訪ねて18歳の母は単身、朝鮮から日本に渡った。熊本で終戦を迎え、「在日」の集落に身を寄せる。そして、祖国の分断。正業に就くことも祖国に還ることもできない。貧困に喘ぎながら生きることに必死だった他の在日一世たちとともに、忍従の日々を過ごす。ひたむきに、「家族」を守るために――。かけがえのない母の記憶をたどり、切なる思いをつづった著者初の小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
112
第二次世界大戦の朝鮮と日本。在日として激動の時代を生きた母とその廻りの人々を描写する。母親を敬う文化が強いことが分かる。著者は政治が専門であるが、政治的な論説ではなく、事象の描写に勤めている。青春と読書2008年3月から2010年2月号に掲載。単行本化にあたり、大幅に加筆・修正したとのこと。2013/07/30
納間田 圭
106
再読。僕の母が昨夜逝きました。で…本棚から引っ張り出してきました。以下は7年前に書いた僕の感想文。 始めは“日本人”として読んでいた自分。中盤から“在日の立場”になり、終盤では“息子”として、最後は“一人の人間”として読んでました。息子の姜さんが読み書きも出来なかった実母の記憶を一冊の本に仕上げたもの。祖国にも日本にも安住の地を見出せない敗戦後の貧しい時代。根なし草になってしまった多くの在日の人達。それでも必死に生き家族を守ろうと…計り知れない苦労をしながらも家族を愛し支え続けた姜さんの母の生きた記録2025/03/09
優希
85
心が打たれずにはいられない「母ーオモニー」の物語でした。18歳で単身日本に嫁ぎ、在日として戦中戦後を強く生き抜く姿は容易に想像することはできません。家族のために働くことを惜しまず、ひたむきに家族を守ろうとするのが美しかったです。周囲との絆や葛藤。歯を食いしばるように生きる労苦は日本人以上のものだったに違いありません。異国の地で激動の時代を過ごした母の愛情を凄く感じました。学がなく、字が書けない母が残した録音メッセージは胸が熱くなります。言葉で簡単には語れない感動があり、何度も読みたい本になりました。2015/05/10
さと
76
「心」に続いて二作目。テレビで拝見する姜氏からはうかがい知れない、氏自身が心に刻むアイデンティティーに触れたような一冊。母を通して知る自分自身に流れる民族の血と身を置く環境との間で苦しみながら、姜尚中であることを認め受け入れていく。異国で生き抜くとは、己を問うことなのだろう。支え導いたのはやはり母、絶対的な存在であった。私とて、日々社会の中で異邦人である自分を認めざるを得ない時がある。でも 異邦人であることを良しとしよう、そう思える一冊でもあった。2015/11/25
納間田 圭
61
読み始めは“日本人”として読んでいた自分。中盤からは“在日の立場”になり、終盤では“息子”として、最後は“一人の人間”として考えさせられました。韓国の言葉で“オモニ”とは“母親”の事。息子の姜さんが読み書きも出来なかった実母の記憶の断片を拾い集め一冊の本に仕上げたもの。二つの国の国策に翻弄され祖国にも日本にも安住の地を見出せない敗戦後の貧しい時代。文字通り…根なし草になってしまった多くの在日の人達…それでも必死に生き家族を守ろうとした。計り知れない苦労をしながらも家族を愛し支え続けた姜さんの母の生きた記録2017/09/30
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