内容説明
母親が自分に寄せる夢を体に溜め込み肥満化した節子。他人の秘め事を言い当てられるがゆえに高慢で孤独な絵理香。周囲の期待に応え続ける美貌の由季子。膨らんだ自意識は、彼女たちを苦しませるだけではない。生きあぐねる女子の生態と心理を辛辣かつユーモラスに描き、痛快極まりないラストへと誘う傑作長編。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
71
最後の最後で、ヒヤッとなった。これってセシルちゃんの再来では?ちょっとしたホラー感ただよってるんでは??相変わらず女の子同士のねじれた関係を書かせたらピカ一だなあ。しかもずっとモヤモヤする。節子も絵理香も、なんかしらんヘンな力があるし。“夢の娘”を地でいく由季子もフワフワと掴みどころがない。誰も彼もが何を考えてるんだかワケわからない。現実味があるのは、「セシルってだれだ」って怒鳴ってる節子の父親くらいか。いやでも、なんと言っても最後のホラーテイストは鮮やか。2019/06/08
ぶんこ
64
感応する女達って、由希子さんが娘にも? 最後が怖い。 母が娘に求めるものが怖い。 平凡な我が母と平凡な自分、鈍感な自分に感謝の気持ちが起きた物語でした。 節子とその母、絵理香、初美、由希子と登場人物皆がおかしい。 ほのかなホラー。 ほのぼのとした絵本をすぐに読みたくなりました。2016/04/10
さおり
45
読み終わってとりあえず、「ア」の一文字しか合ってないじゃないの!と思いましたよ。気持ちが入るまでに少し時間がかかりましたが、第二章以降ははやかった。女同士って、どこを切り取ってもホラーになりうるね。こわいこわい。4人の語り手、みんな私だわ。と言いたいとこですが、やっぱ美しい人の気持ちだけは、若干ピンとこなかったりして。2014/06/30
dr2006
35
細胞で形成され外と分離されている身体のどの辺りに「心」が存在するのかを考えた事があるだろうか。自分の心の位置もわからないのに、自分以外の人の身体にも、表面の皮膚細胞に囲われた身体の中のどこかに心があることを類推してしまう。そのように決して目に見えないのに、互いの細胞の境界を通り抜け心と心が感応し、複雑に絡まり連鎖していく。その様子を具現化したストーリーは読み応えによって読者を痺れさせる鋭さがあった。初読みの作家朝倉かすみ、自意識につき刺さるイヤミス。2015/12/23
ゆうく
31
そして、物語は繰り返す。女性の悪意やコンプレックスを感じさせるところもありますが、その前に読んだグロテスクのほうが強烈でした。この作品もですが、男性のほうも嫌な感じがありますね。節子の高校生活の過程とその先にていてはもう少し描いてほしかったです。2016/06/15