内容説明
離婚と乳癌手術を同時に経験した20代女性。教師の冷たい一言で不登校になった女子高生。理不尽な上司に振り回される駆け出しサラリーマン。恋愛、家族、仕事と抱える悩みは違えども、「人生の矛盾」に気がついたとき、患者は皆一様にカワイクなった――老若男女11人の症例から読み解く、現代人の心の深層とは。
目次
第1章 カワイクなる、ということ(アライグマのピンズ いい未来 カワイイとは無縁から、カワイイへ 好意を逆手に取る)
第2章 家族から“卒業”して、カワイクなる(きつい冗談 それ何かイタイよ 新しい時代、新しい家族のあり方 性格は遺伝?)
第3章 恋愛でカワイクなる人、ならない人(哲学娘の卒業 病院に里帰り 古い“自分”を脱ぎすてて)
第4章 生きがいが人をカワイクする(三十万ドルクラブ パチョーリの勉強 課題達成こそ、人生の喜び)
終章 治療するとカワイクなります(家族相談)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
eirianda
6
ナルホド、今は個人化の時代なのだなぁ。自治会(地域のため)とかPTA(子どものため)とか実家(家族のため)とか古い体質に囲まれていて悶々としていたのが、サーっと晴れたわ。家族内においても個人個人の達成感に重きを置けば、自分に対しても希望が湧くというもの。自分の人生を鑑みるとまさに私は個人化を目指してきたことに今さら気づいたよ。ありがとう、大平先生。2015/05/26
Yoshie S
5
いわゆる鬱や精神病理の本だけど、症例とつく診断がわりとわかりやすくかかれている。 ユーモアのあるカウンセリングだなぁと。いわゆる心の病について調べていると自分も当てはまるような気がするけれど、ここでは紙一重な加減も描かれている。 あとがきの精神科の診断にも流行りがある、でさらに気持ちが楽になった。2014/07/26
ままくー
3
11の症例を通し、患者が最後には「カワイク」なっていく様子を解説。考察は抽象的であまり理解できなかったけど、症例が面白かった。「ヘロヘロだ」「死にたみがすごい」みたいに重症化してから心療内科いくのかと思いきや、わりとみんなラフに行ってる。 具体的な個々の症例があると、色んな人がいてなんだかちょっと安心する。本当は身近にいるあの人もその人もこの人も、みんないろんなものを抱え、悩んでるはずなのに、現実だとそういうの抜きにして、他人と関わらざるをえない。そりゃ負の感情も生まれるわー。症例だけ読んでも面白い1冊。2019/06/29
skk1206
3
むかしと比べると劇症化する例が激減した精神疾患の治療録。患者が現状を自覚し、課題を見つけ実践し、その過程で治癒していくさまを「カワイクな」ったと表現。発症のきっかけが対人関係そのものであったかつてとは異なり、現在ではそこに、患者自身の生きがいや達成感といった要素が加わっている現状を整理する。2019/05/12
よしの
3
精神科の先生が書かれた本で、専門書という意気込みよりも、1つのレビューという気持ちで読める。というのは、症例となっている人たちの病自体に焦点を当てているわけではなく、彼らが生きづらくなった原因を紐解く過程に焦点を当てているからである。読んでいると実際にかかった年月よりも短いスピードで解決していくため、そんなにすんなりいくもの?と感じる部分も多く、また著者である大平先生の誘導的な感じが少し鼻に付くが、客観的に具体的に分析していこうとする姿勢に好感を持てた。生きづらさの複雑さとシンプルさを味わえる本。2017/02/11