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内容説明
ワーグナーに愛されたにもかかわらず、音楽史の表舞台から「消された」楽器、ヴィオラ・アルタ。この数奇な運命をたどってきた「謎」の楽器が数十年ものあいだ、渋谷の楽器店の奥でほこりをかぶっていた。ヴィオラ奏者であった著者は、この楽器と偶然に出会い、魅せられ、ヴィオラ・アルタ奏者に転向。欧州を駆けめぐり、なぜこの楽器が消されたのか、その謎を解いていく。19世紀後半の作曲家たちがヴィオラ・アルタを通して表現しようとしていた音色とはどんなものだったのか。クラシック音楽の魅力と謎解きの楽しさに満ちたノンフィクション!【目次】はじめに/第一章 「謎の楽器」との出会い/第二章 失われた歴史を求めて/第三章 ヴィオラ・アルタを弾きながら/第四章 ヴィオラ・アルタの謎を解く/おわりに
目次
はじめに
第一章 「謎の楽器」との出会い
第二章 失われた歴史を求めて
第三章 ヴィオラ・アルタを弾きながら
第四章 ヴィオラ・アルタの謎を解く
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
77
楽器にまつわるノンフィクション。【はじめに】にある文章には「演奏家と楽器とは、親であり兄弟でありお互いの分身でもありながら、おずおずと触れ合う恋人同士でもある。」とある。楽器を鳴らしたことがあり少しでも上達したいと思った全ての人が感じることではないでしょうか。そして当時の音楽事情も知る事ができ、何よりヴィオラ・アルタという未知の楽器についての謎解きの旅が面白い。2024/12/18
みみずく
13
ヴィオラ奏者の筆者が、通い慣れた渋谷の楽器店でふと目にした楽器。ヴィオラより大きく、チェロより小さい。これはどこかの博士が作った「ヴィオラ・なんとか」という楽器らしい。そこから筆者のこの謎の楽器の歴史を探る旅が始まる。遅々として進まない調査だったが、オーストリアにいるもう一人の、この楽器ヴィオラ・アルタ奏者と知り合ったことで大きく前進する。現地で合奏したことによって発見した、ヴィオラ・アルタの音色の特徴。そしてこの楽器が消えてしまったことには戦争も影響しているようだった。(続)2014/04/02
櫻井愛
7
コミュで教えていただいたご本。大ぶりなヴィオラであるヴィオラ・アルタと運命的に出会い、謎を追いかけた著者の情熱が伝わってくる。戦国時代や明治だけでなく第二次世界大戦などの歴史も波乱に含んだ壮大な背景のもと、幻と言われてしまったヴィオラ・アルタが著者と出会ったことで今に甦るのが素晴らしかった。調査の点と点が線になる瞬間にゾクゾクした。音も聴けるらしいので早速聴いてみよう🎶 ご紹介ありがとうございました。2025/03/03
はづきち
6
日本人のヴィオラ奏者、平野さんが偶然47センチのヴィオラ=ヴィオラ・アルタという楽器を見つけ、その歴史を辿って行く話。ミステリーの謎解きを読んでいるようで面白かったです。平野さんは「ドイツ人がドイツの音楽を奏でるために作ったドイツの弦楽器」だと言っています。一時はかなり流行った時期もあったらしいけど、政治的な問題や戦争での焼失等によって忘れ去られてしまったということです。私のようなドイツ音楽もヴィオラも好きな人間には、この上なく興味をそそられる楽器です。生の音をぜひ聴いてみたい!!2013/03/04
meg
5
フィクションとノンフィクションの狭間をたゆとう心地よいエッセイ。ヴィオラ・アルタというヴィオラよりも大きいサイズの弦楽器は、19世紀後半にドイツのリッター教授の設計によって量産されたものの、今日演奏する人もいなければ存在すら知られていない。なぜか。この楽器と運命的な出会いをしたヴィオラ奏者の著者が、ヴィオラとは異質の澄んで哀しげな音色を読者に聴かせながら、その謎を推測する。曰く、「ドイツ人がドイツの音楽を奏でるために作ったドイツの楽器」だが、ワーグナーに愛されたがゆえに、戦後その存在を消されたと。2013/08/13